様々な金融分野でフィンテック企業が勃興(写真:アフロ)
金融分野でフィンテック企業が勃興 銀行は淘汰されるか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160804-00010000-moneypost-bus_all
週刊ポスト2016年8月12日号
株式市場においても有力テーマのひとつとして注目を集めている、金融とIT(情報技術)を組み合わせた新技術「フィンテック(FinTech)」。経営コンサルタントの大前研一氏が、フィンテックによる新たなビジネスについて考察する。
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すでに海外では様々な金融分野でフィンテック企業が勃興している。たとえば、スマホを活用した手軽な決済支援・小口送金ができる「ペイパル」や「スクエア」、AI(人工知能)を使った資産運用の「パーソナルキャピタル」や「ベターメント」、融資ネット仲介・消費者金融の「レンディングクラブ」や「アヴァント」などである。
日本はまだ現金社会だが、海外では決済や送金などの電子化が急速に拡大している。たとえばアフリカでは、ケニアで働いている息子がルワンダの母親に送金する場合、「バルティ・エアテル」という会社のモバイル決済サービスを使うと、携帯電話からプリペイドカードの金額分を簡単に送ることができるのだ。
また、アメリカではほとんどの人がイントゥイットなどの電子家計簿を使っている。サラリーマンも確定申告をしなければならないからだが、年度末に申告する時は会計士や税理士を使わずに電子決済で納税できる。
さらに、資産運用分野では、ロボットアドバイザーによるデジタル資産運用サービスが急成長している。細かい話では、お釣りを貯めて金融商品で運用してくれたりもする。これまでは基本的に金持ちしか銀行や証券会社の資産運用サービスを利用することができなかったが、今や資産が少ない人でもロボットアドバイザーを活用すれば、かなり的確なファイナンシャル・マネジメントが可能になったのである。
あるいは、私が1982年に考案して特許を取得した「フロート式デビット決済法」も、フィンテックの一つである。総合口座の定期預金に使った金額分だけ“鍵”をかけ、普通預金から無事に引き落とされたら“鍵”を解除するというものだが、このコンセプトを応用して貯金だけでなく、住宅、車、生命保険、年金、退職金なども将来の支払い保証の担保として紐付ける仕組みを作れば、人々は手元で使えるキャッシュが一気に増える。
それらを総合して個人の信用創造をする“フィンテック商社”ができたら、日本人のライフスタイルはガラリと変わると思う。
本来、その最短距離にいるのは銀行などの金融機関である。ところが、古いシステムに縛られている彼らは、ネット時代、デジタル時代になっても大半の業務で紙に印鑑を捺すペーパー中心のアナログ時代のやり方を続けているし、やろうと思えば顧客データベースから信用度を正確に把握できるはずなのに未だに担保を重視し、手数料で稼ぐビジネスに執着している。
このまま銀行が自己改革できなければ、それこそフィンテック企業に淘汰される筆頭候補となるだろう。