安倍首相の会見「未来への投資」?
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2016年07月11日 在野のアナリスト
参院選の結果、様々な余波も生まれていますが、自民が比例で2000万票とり、小泉旋風以来と話題です。どうやら10〜30代が比例で自民に投票しており、それが嵩上げしたようです。若者の保守的傾向、という以上に政治についてよく分からないし、現状を変えることに臆病になっている傾向も見受けられます。英国民投票のように、よく分からないまま投票するとろくなことにならない。今が多少不満でも、大いに不満でなければそれでいい、ということなのでしょうが、英国の離脱派のようにウソをついていたのが、日本では保守政党だった、というのが皮肉なのでしょう。結果は両国ともウソをついた者勝ちになりました。つまり政党の公約だったり、発言だったりを信じているうちは、ウソをついた者が有利になってしまう。正しい情報、正しい判断を促すことが如何に大切か、を示すのでしょう。
参院選では改憲勢力が3分の2、と伝わりましたが、新党改革は解散し、日本のこころは政党要件を失いかねない瀬戸際です。お維は議席を伸ばしましたが、週末の8、9日に狙ったかのように大量のTVCMを流した。自民はすでに着々とTVCMを流していたので、維新も真似して大量出稿といった行為に打ってでたのでしょう。しかし例えば、都知事選へ出馬を検討していた石田純一氏が、取りやめを発表しています。選挙の事前準備になりかねず、出演していた番組の差し替えなど、大きな影響がでたとしますが、出馬するか、しないかですでに番組がとぶのに、選挙期間中のCMが認められる? CMのインパクトと、番組出演では明らかにCMの方が高いにも関わらず、そちらを規制してしまうのは奇妙でもあります。
つまり番組に出演しても、選挙や政治の話をしなければ影響は少ないですし、都知事選なら地方ローカル番組であれば問題はないでしょう。それより全国規模でCMを流せば、それは広告であってインパクト大なのです。新聞への広告は細かく規定もあるのに、TVCMについての規制は? 今回ほど奇妙な選挙戦というのも珍しいといえます。そして、TVCMの大量出稿をしたところが議席を伸ばした、というのも象徴的だったと言えるのでしょう。
むしろ来月に内閣改造と伝わりますが、そこで改憲内閣なのか、経済内閣なのか、目指す方向性もわかります。ただ明日にも経済対策を準備、と伝わり、市場が一段高したかのように今日の株高は見えますが、日経225の先物をみる限り、日系と日米合弁系がワンツーで大量買いをみせた。つまりご祝儀を演出する意図が最初からあって、そのタイミングで円安にすることも最初からシナリオとしてあったのでしょう。今日は最初から米雇用統計をうけて250円高で始まることは予想されており、600円高まで行ったことに驚きはありません。
では安倍首相の改憲で語られた「未来への投資」は、極めて問題も多い。ハブ港湾の建設、リニア新幹線の前倒し、整備新幹線、農林水産物の輸出対応型施設、すべて大型の公共工事であり、従来型の悪しきバラマキです。保育・介護の受け皿整備もそうです。保育士や介護士の支援拡充、年金受給資格期間の短縮、無利子奨学金、非正規という言葉を国内から一掃、と公約に謳われていたことは並びましたが、財源の確保されていない大風呂敷です。恐らくこれらの政策を行うと、どこかの政策の予算が減る。例えば年金受給資格期間の短縮などをすれば、全体の給付を引き下げ、バランスをとろうとする。つまり財務省的な調整の結果、『やったような感じ』に終わることが必然です。バラマキの公共工事は、復興や他の公共工事ともバッティングし、労務費だけで多大なコストアップ要因となるにも関わらず、そこしか出てこないぐらい、安倍氏の『未来』は狭窄しています。
安倍ノミクスが評価された、などというメディアもありますが、その結果でてきたのが大量の公共工事なら、安倍ノミクスとは結局、旧来の自民党が行ってきたバラマキで、景気の押し上げ効果はほぼない、という評価に落ち着くのです。もしそれを評価した、というのなら、それはやはり建設業界などの組織票を手堅く固めたから勝った、ということにもなるのでしょう。そして、この程度の内容を「評価した」として上昇した株式市場もそうです。株価が上昇したのに、国債がやや買われるなど、決して楽観に傾いたものでもない。安倍氏のいう『未来への投資』、どう考えても『地雷への投資』、将来的に踏めば政権がふっとぶような、重大な問題を抱えるような内容としか思えないのでしょうね。