テロのあった飲食店周辺で献花する人たち(C)AP
ダッカテロが業績直撃も “イスラム進出”日系企業に大難題
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/184951
2016年7月5日 日刊ゲンダイ
バングラデシュの首都ダッカで起きたテロ事件で、日本人7人を含む20人が殺害された。地元メディアによると、実行犯7人は20〜28歳のバングラ人だった。当局筋は「ダッカ市内に住む学生」と伝えている。
バングラデシュでは、昨年10月に日本人男性が殺害される事件が起き、現地に進出する日本企業は安全対策を強化しようとしていた。その矢先のテロだけに衝撃は大きい。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の統計では、バングラデシュに進出する日系企業は240社に上っている(今年2月時点)。14年5月にバングラデシュのハシナ首相が来日した際、安倍首相は4〜5年間で最大6000億円のODA供与を表明した。日系企業のバングラ進出は加速し、進出企業は4年間で倍増している。
テロ発生後、幹線道路の橋を建設する大林組と清水建設は社員の無事を確認後、自宅待機とした。ユニクロはダッカ市内に9店舗を出店。東レや、ファスナーで知られるYKKなども拠点を置く。
バングラデシュは人件費の高騰する中国に代わって、“製造工場”として注目を集め、衣料大手のスペイン「ZARA」や、米ギャップなども生産委託している。現地に詳しいジャーナリストの姫田小夏氏が言う。
「バングラデシュはイスラム教徒が大半を占めますが、周辺国に比べ穏健派が多く、日系企業は比較的、安心してビジネス展開していたと思います。そんな国でさえ、テロは防げなかった。企業の進出姿勢に変化が起きても、不思議ではありません」
■インドネシアには1553社が進出
イスラム過激派によるテロは今後も頻発しかねない──そう企業が判断したら、イスラム教徒の多い国への進出を避ける可能性がある。
例えばインドネシアのイスラム教徒は88.1%で、日系企業の進出数は1553社(15年11月、ジェトロ調べ)。トヨタ自動車やホンダ、パナソニック、花王などだ(別表参照)。
「これまで日系企業は、人件費などコスト面を重視して海外進出してきました。でも今後は、テロ対策を第一に考える必要があるかもしれません。テロが起きたら、企業活動は停滞し、業績を直撃する恐れがあります。海外進出のリスクを根本から見直すべきでしょう」(東京商工リサーチ情報本部長の友田信男氏)
パキスタンやマレーシアもイスラム教徒は多い。インドのイスラム教徒は全体の14.2%に過ぎないが、12億人の人口を抱える国だけに人数ベースだと1億6800万人に達する。バングラデシュの人口(約1億6000万人)より多いのだ。
海外進出する企業は難題に直面している。