前回の「フランス労組『ユーロ2016妨害もありえる』全国で激しい暴動・一部で都市機能停止」の続報と、ユーロ2016年でのイギリス人とロシア人の全面対決についてまとめました。
暴動はともかく、 原発での従業員ストライクや石油の供給、鉄道やフェリーの運航を停止させるなど、 国の機動力である労働者が一致団結して国の機能を停止させてしまうなんて、フランスの労働者は本気ぶりがうかがえます。
「イギリスでは人々が政府を恐れている。
フランスでは政府が人々を恐れている」
民 主主義、とは国民が主権を持っている状態のことです。現在の西洋諸国は民主主義を謳ってはいますがそれはあくまでも専制政治から脱却した際に設定されため ざすべき理想(あるいは単なる建前)に過ぎず、実際には金や一部の権力者が主権を持っていることは多くの人間の目には明らかです。
本当の民主主義であれば、国民の代表者に過ぎない政治家などから構成される政府が主権者である国民を恐れるのが当然かと思いますが。
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フランス:200年で最大の革命が起こるもマスコミは(いつも通り)完全に無視
Media Blackout As France Witnesses Biggest Revolution In 200 Years
6月2日【Your News Wire】http://yournewswire.com/media-blackout-as-france-witnesses-biggest-revolution-in-200-years/ より翻訳
フランスではサッカーのユーロ2016決勝戦が予定され数百万人の訪問者を迎え入れる準備を進めているが、近年の歴史で最大級のデモに直面し、国家非常宣言は延長されている。
フランスの町中に数十万人もの市民が繰り出し、一部では新フランス革命と呼ばれているものの西側諸国のメディアはそれを完全に無視している。
Anonhq.comの報道より:
今年の3月9日、2012年から社会主義者のオランドが権力の座についてから初めて、政権に反対する共同のデモ活動が初めて行われた。3月31日には40万人近くの人々が労働法の広範囲に渡る変更に反対するデモに参加した(主催者側によれば参加者数は120万人としている)。
4月9日にはパリ市内およびフランス各地で6度目のデモ行進が行われ、約12万人が反対意見の多い労働法改革に反対の意を表した。さらに主催者は4月28日にストライキをもう一件、5月1日の労働者の日には大規模なデモの決行を呼びかけている。
デモ参加者と警察官の衝突やフランスの複数の都市で催涙ガスの配備に関する報告、そしてデモ参加者が車両を燃やしたり、窓を割ったりする動画などがインターネット中に溢れかえった。
(画像 5月26日、フランスのナント市で銀行に印刷機を投げ込むデモ参加者 STEPHANE MAHE/Reuters )
Premiers chiffres: Rennes (cf photo) 15000 -Bordeaux 10000 -Nantes 10000 -Rouen 15000 - Le Havre 15000 #Manif28avril pic.twitter.com/3PwEQ4psXC
― Printemps social (@PrintempsSocial) 2016年4月28日
主催者の呼びかけに対し、ベルナール・カズヌーヴ内務大臣はリヨン市内で次のように述べている。
「これら一部の暴徒によって起こされた混乱に対し、私が糾弾するのと同じくらいデモの主催者らも確固として糾弾することを求めます」
労働法改革案の完全な撤廃を要求しているフランスの労働者らは、5月の第三週に入ってデモや行進、交通の妨害などを強化させている。
(画像 フランス西部の石油精製所でのバリケードに対戦する警察官 JEAN-SEBASTIEN EVRARD/AFP/Getty Images )
最新の情報によれば、フランス国内全体のガソリンスタンドの3軒のうち1軒はガソリンが枯渇し、普段から常備がしっかりなされているガソリンスタンドに長い行列ができる事態を招いている。
(画像 フランスのガソリンスタンドにできた長蛇の列)
フランスに8ヶ所ある石油精製所のうち5箇所にはバリケードが設置され、原子力発電所の5分の1近くからの送電は従業員のストライキによって停止状態となっている。国内の電力供給量が低下したため、政府は緊急用の備蓄を必死に探し求めざるをえない状況となった。
(画像 石油精製所への侵入を防ぐバリケード)
5月26日には企業の雇用・解雇がより容易になる政府の草案に反対し15万人以上がデモ行進に参加。
ロイターの報道より:
「フランス南部の都市、ボルドーでは約100人が警察署を標的にし物を投げ込み、パトカーを破損するなどしていた。パリやフランス西部の都市ナントでは、銀行の窓が割られ、デモ参加者が警察官らと衝突している。
次回の大規模なデモはフランスでユーロ2016が開始した4日後で、フランスの上院が改革の包括提案について議論を始める6月14日の予定である。
政府が労働法改革草案の撤回を拒否した場合、CGT(訳注:デモの主催団体の労組の一つ)はユーロ2016を妨害する可能性があると警告を発している」
フランスのマニュエル・ヴァルス首相には草案の一部を変更する意志があるものの、労組は妥協を認めていない。
特に政府が同法案を可決するにあたり議会を回避する憲法上の力を制定していることに対し、国内最大級の労組CGT率いる複数の労組は、その怒りを公開文書によって明らかにしている。
「今週、この労働法改正の撤回、そして新しい権利を要求するために複数の産業の労働者によって行われた活動、ストライキやバリケードから、私たちの決意は損なわれていないということが明らかです」
問題の労働法改革の内容:
1.不況時には容易に従業員を解雇し、コストを削減することが企業側にとってより容易になる。
2.企業内の賃金および労働条件に関し、企業側と、労働組合ではなく従業員の大多数の同意が得られた場合には、企業は国の定める労働者保護の規則に縛られない。
3.雇用者が法定労働時間を現行の35時間から48時間、そして「例外的な許可」が得られた場合には最高で60時間までに延長し、残業手当は現行の25%から10%以上に引き下げることが可能になる。
4.雇用者により多くの人を正規雇用させることを目的に、短期の労働契約に関して付加税をかける提案。
5.不当解雇の事例に対する賠償金について、月給15か月分という上限を定める。
悲惨な支持率や高い失業率に悩まされているオランド大統領は、フランス国内で苦しんでいる若者の生活を改善することの任職期間すべてを費やしてきたが、雇用不足に取り組むためにこの労働法改革が必要であると話している。
ミリアム・エル=コムリ労働相もまた、反対勢力によって「ボスのための法律」と呼ばれる新しい労働法の擁護の立場を取っている。
「新法はわが国の状況に合致したものになっています。失業率は10%を越え、20年前と同じレベルで す。先月には改善が見られましたが、満足のいくようなものではありません。ヨーロッパの他の国と比較すると、生み出された雇用件数は少ないものです (2013年から2015年の間、フランスで増加した新規雇用は57,000件、ドイツで482,000件、スペインで651,000件、イタリアでは 288,000件)。
ですので今回の改革の内容および目標は、雇用へのアクセスを改善することが可能になる、というだけのものだと私は認識しています」
しかしながら労働法改革の反対者勢力によれば、改革によって企業が自由に従業員を解雇できるようになることで、大事にされてきた権利が脅かされ、若者の労働の不安定さを悪化させるだけだとしている。
イギリスのテレグラフ紙より:
「政府は労働法改革によって数千単位の雇用を生み出すと考えているが、IMF(国際通貨基金)およびフランスの反対勢力は、この改革によって現在10%の 記録的な失業率や急上昇し、来年にはGDPの98%に到達するであろう公的債務を目立って改善するにはとても充分ではない、と考えている」
今後の展開
フランスの社会主義政権が全国的な労働組合による反逆に直面するのは、30年以上の間で初めてのことである。改革に反対する左派は膨大な数にのぼり、オランド大統領自身の支援を基盤から崩壊させる脅威となっている。
インディペンデント紙より:
提出された改革案は、社会主義政党やさらなる左派からは裏切り行為でオランド・ヴァルス政権の右傾化であるとみなされて強い憤懣を生み出した。
デモ行為は元社会党第一書記で、同党内の職務すべてから辞任していた週35時間労働の産みの母であるマルティーヌ・オブリー女史によって先導されている。
彼女は、フランスの労働法を「自由主義的」で市場優先の独断に沿って書き直す行為は、フランスの「社会契約」に対する背信にあたると不満を明らかにして
提案された改革案に対しては100万人以上の反対者署名が集まり、フランス史上において記録的なものとなった。Le Parisien紙のアンケートによれば、労働法改革には大多数の国民が賛成してはいるものの政府のやり方には70%が反対している。
(画像 5月17日、フランスのボルドー市で警察官とデモ参加者の衝突の様子)
労働法改革を撤回した場合、失業率の増加を取り除かない限りは来年の選挙に出馬しないと公言しているオランド大統領にとって、政治家としての自殺行為を意味する。
しかしガーディアン紙が公正に記しているように、生き残りを賭けているのはオランドだけではなくフランスという国そのもののイメージも同様のようだ。
(翻訳終了)
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【コメント】
オブリー女史の労働者の権利よりも自由主義的経済を尊重する動きが社会契約に反する、というのがまさにツボを押さえた表現ですね。
こ れまでも他の西洋諸国や日本などでも、今のフランスと同様の「もっと雇用を生み出し国民の生活を豊かにするため」と労働者の保護が緩和されてきましたが、 その結果どうなったかは言うまでもないことでしょう。自由経済化なんて、聞こえはいいですが労働者の奴隷化に過ぎないようです。
ユーロ2016でのイギリス人とロシア人の衝突について
さらにフランスはすでに自国民のデモで相当混乱しているようですが、ユーロ2016が始まり、調子に乗ったイギリス人サポーター(フーリガン)がマルセーユでの試合開始の数日前から暴徒沈静用の警察官を煽って衝突していました。
ここまではまだ子供の遊戯程度のかわいさだったのですが、そこに対戦相手のロシアの「プロフェッショナル」なフーリガンが参入し、イギリス人のフーリガンをスタジアムから追い出し、路上で派手な肉体戦となるなどして一部のイギリス人フーリガンに深刻な負傷者がでる結果となっています。
(画像 テレグラフ紙)
ロシア人だけが捜査の対象になっているようですが、それは「イギリス人サポーターは酒を飲みすぎて逃げるのに必死だけど、ロシア人はイギリス人とは異なりまだ酒を飲んでおらず、普段から体を鍛えていたために酔っ払いのイギリス人を一方的に急襲していた」からだそうです(笑)ロシア人はその後、お酒を飲みに行ったのだとか・・・
フランスといえばつい最近もパリで自称ISISという集団が事件を起こしていましたが、全国のフランス人労働者や失業中の若者が革命にでもならんばかりの暴動・ストライクで国の機能が一部麻痺。
ついでにさらに6月のフランスを襲った洪水では、10億ユーロ相当の被害が出て、パリ市内の一部も浸水していました(テレグラフ紙)。
そしてイギリス人・ロシア人のフーリガンまでもがフランス国内で大暴れしているなんて、フランスはここ最近、災難続きですね・・・(;´д`)=3トホホ・・
しかし他の国から見れば、自分たちの政府に対する不満を抑えることなく表明しているフランス人に対し、賞賛の声もあがっています。
「フランスのデモ参加者が、
世界に対して正しいデモの仕方を見せつけてくれた」
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