中国・米国間初の高速鉄道建設プロジェクトが打ち切りになり、各方面の注目を集めている。写真は中国の高速鉄道。
米中高速鉄道計画が白紙に=米側の一方的行為―中国メディア
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2016年6月14日(火) 17時30分
中国・米国間初の高速鉄道建設プロジェクトが打ち切りになり、各方面の注目を集めている。米国側のエクスプレスウエスト社が突然、一方的に契約をうち切ったもので、発表された公告には、「中鉄国際集団の米国法人とともに合弁企業を設立し、カリフォルニア州南部とラスベガスを結ぶ高速鉄道を建設する計画は今後継続しない」とある。専門家は、「中国の高速鉄道は製造、建設、運営の各方面で世界中が驚くような成果を挙げており、コストパフォーマンスの優位性は明らかだ。プロジェクトが完成すれば、現地の経済・社会の発展に対して非常に大きな牽引作用がある。米国側が突如、一方的に契約をうち切ったことの本質はやはり保護貿易主義だ。こうした無責任な行いは米国のビジネス上の信頼を損なうだけでなく、ひいては鉄道沿線の米国国民の利益を損なうものといえる」と話す。
▽米側の契約違反は承伏できない
握手から手のひらを返すまで、1年もかからなかった。2015年9月、エクスプレス社は中鉄国際との間で合弁会社設立をめぐる交渉をスタート。狙いはネバダ州ラスベガスとカリフォルニア州ロサンゼルスを結ぶエクスプレス社の高速鉄道プロジェクトの開発、資金調達、建設、運営準備を支援してもらうことにあった。また沿線各地に駅を設置して、沿線住民がかねてより頭を痛めてきた交通渋滞の緩和を目指した。鉄道は全長370キロメートルで、総投資額は127億ドル(約1兆3480億円)に上り、もともとの計画では今年9月に着工するはずだった。
米側は突然の打ち切りについて、「米国連邦政府の『高速鉄道は米国で製造されたものでなければならない』との規定がプロジェクト推進の最大の障害になった」との見方を示す。国内外の複数の専門家は、「さきに双方が調印した合意の規定では、合意の発表でも取り消しでも、必ず双方が一致して同意することが必要だとされていた。エクスプレス社が『突然の攻撃』を行ったことは明らかに契約違反であり、その述べる理由も承伏できるものではない」との見方を示す。中国国際問題研究院米国研究所の滕建群所長は、「エクスプレス社が提携をうち切ったのは主として連邦政府の反対を踏まえてのことだ。米国の鉄道建設に他国を関与させないというのは、実に保護主義の具体的な現れだ」と話す。
米国コロラド大学デンバー校金融学部の代表を務める楊堅名誉教授は、「米国企業が突然、一方的に契約をうち切るというやり方は、米国がビジネス取引でこれまでずっと大切にしてきた契約の精神に明らかに違反する。もともと双方が契約を結ぶことができたのは、ビジネスの上で米国企業にもメリットがあるからだった。よって考えられるのは、米国の大統領選挙の年にしばしば強化される政治的要因などのビジネス以外の要因が、正常なビジネス上の方針決定を邪魔したということで、米国企業を含む関係者のビジネス上の利益が損害を受けることになる。また同時に、これは中国企業の対米投資が政治的リスクにぶつかる具体的なケースでもある」と指摘する。
▽中国高速鉄道の実力は高い
それでは中国高速鉄道の頓挫はその競争力の弱さを物語るものだろうか。各方面の情報を総合すると、中国高速鉄道の優位性は十分に明らかだという。
中国工程院(工学アカデミー)の王夢恕院士は、「中国の高速鉄道技術には3つの優位点がある。第1に、軌道やトンネルの建設技術の高さで、さまざまの複雑な状況に対応できる能力を備える。たとえば温度差の大きい状況でもレールが変形しないことを保証できる技術がある。第2に、中国の高速鉄道の技術チームは厳しい試練をくぐり抜けてきた屈強なチームだ。第3に、中国高速鉄道の建設コストはライバルよりも低く、試算では他国の33〜50%ほどで建設できる」と話す。
価格だけでなく、中国高速鉄道技術のもつ強みは世界に冠たるものといえる。「列車の頭脳」と言われる列車のネットワーク制御システムを例に取ると、従来の技術では帯域幅と伝送速度の影響で、基本的な列車のコントロールと機能診断のデータの伝送しか行えなかったが、情報化の発展によりこの「頭脳」への要求がますます高まり、ボンバルディアやシーメンスなどの国際大手もこの分野の研究開発をことのほか重視するようになった。さきには中国中車株洲電力機車研究所有限公司が独自に開発した世界的な次世代列車ネットワーク制御システムが、時速380キロメートル級の中国製標準動力ユニットへの搭載テストに成功し、中国高速鉄道は「最強の頭脳」を備えるようになった。
中国国家発展改革委員会対外経済研究所国際協力室の張建平室長は、「一方で、メードインチャイナの海外進出の最も輝かしい名刺である中国高速鉄道には、独自の知的財産権、全産業チェーンをカバーする優位性、最良のコストパフォーマンスが備わっている。また一方で、高速鉄道の建設はシステム工学であり、カバー面が広いため、推進プロセスで紆余曲折があるのはごく当たり前のことで、冷静に対処する必要がある」と話す。
▽貿易障壁は取り除かれるべき
高速鉄道は人々が都市から都市に移動するために早くて便利な選択肢を提供するだけではなく、二酸化炭素(CO2)の排出量を削減する有効な方法の1つでもある。ここ数年、中国は30カ国との間で高速鉄道をめぐる協力や話し合いを進めており、「相互に接続する協力圏」がトルコ、サウジアラビア、イラン、タイ、ラオス、マレーシア、ブラジル、ロシアなどの国に広がる。
アナリストは、「中国は関連国の高速鉄道建設の現実的なニーズと要望を理解しており、中国がもつ優位性を積極的に発揮して各国市場に進出している。これは中国企業の利益源を開拓拡大するためばかりではなく、当事国がインフラ水準を引き上げるのを支援し、現地の人々に経済発展の実質的な恩恵をもたらすことにもつながる。関係各方面は、中国が『相互利益・ウィンウィン』の考え方に基づいてさまざまな努力をしていること、一方的に相手側に何かしてもらおうと考えているのではないことを冷静に認識し、ビジネスで中国がみせる誠意に公平に対応するべきだ」と指摘する。
張室長はさらに進んで、「これまでの米中双方の枠組合意と進展ぶりを考えると、数多くの敏感な問題はすでに考慮済みのはずだ。突然の契約打ち切りは貿易摩擦の延長だといえる。注意しなくてはならないのは、高速鉄道産業は鉄鋼や電気設備など川上から川下に至る多くの製品を大量に必要とするのが常で、米国が今回のプロジェクトを頓挫させて自国の関連産業を保護し、この機会に中国製造業の勢いを挫こうという動機を抱いていることは実にはっきりしている。ただ現在、米国のインフラは相対的に後れており、こうしたやり方は米国国民の長期的な利益に合致しない」と分析する。
楊名誉教授は、「第二次世界大戦以降、米国はずっと国際社会で自由貿易と投資を推進して大きな利益を得てきた。特別にはっきりした技術的理由がない限り、米国が作った高速鉄道でなければ認可されないという強制力をもった制限は、隠された貿易障壁であるとの疑いを免れない。米国側は中国企業とウィンウィンの取引を進めることにもっと慣れるべきだし、中国側は国際投資や国際貿易における政治的リスクの存在を意識してこれを効果的にコントロールしなければならない」との見方を示す。(提供/人民網日本語版・編集/KS)
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