「E−767」早期警戒管制機
【最新国防ファイル】早期警戒管制機「E−767」 死角なき領空監視の眼 伊勢志摩サミットでも活躍
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20160603/plt1606031140001-n1.htm
2016.06.03 夕刊フジ
機体の真上に巨大なレーダーを載せた、特異な外観を持つ早期警戒管制機。伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)では空域監視任務にあたった。旅客機としておなじみのボーイング767をベースにしているため「E−767」と呼ぶ。英語表記の頭文字を取って「AWACS(エーワックス)」と表記されることもある。
任務は、地上のレーダー基地の索敵能力を補完することだ。レーダー波は直進しかしない。地球は丸いため、索敵距離が長くなればレーダー波は海面から徐々に離れ、水平線ギリギリで飛んで来る敵機を発見できない可能性が出てくる。
それを痛感したのが、1976年9月6日のベレンコ中尉亡命事件である。極東のソ連軍基地を飛び立ったベレンコ中尉が乗るMig−25(ミグ25)戦闘機が、日本のレーダー網をかいくぐり、北海道・函館空港に強行着陸したのだ。もし、攻撃の意思を持っていたら、函館は火の海となっていた。
そこで、航空自衛隊はレーダー基地を上空へと持っていき、真下に向けて索敵することで、低空域の敵を発見する戦術を加えた。事件から3年後の79年、米海軍が空母艦載用として開発した早期警戒機E−2Cの導入を決めた。83年から部隊配備が開始される急ピッチだった。
実はこのころから、広範囲を索敵・分析し、管制機能を持つ早期警戒管制機の配備が検討されていた。米空軍が配備するE−3が候補だったが、同機の生産はすでに終了していた。そこで、E−2の配備を進めつつ、次期早期警戒管制機を探すことを決めた。
80年代後半、ボーイング社はE−767を提案した。92年に防衛庁は採用を決定し、1機あたり約560億円で4機発注した。98年3月に航空自衛隊へと納入され、99年に警戒航空隊(浜松基地)に配備された。その後、この部隊は中国の領空侵犯に対抗するため、拡大改編され、2014年に新しい部隊に編制され、沖縄県・那覇基地に置かれている。
機体の真上にある巨大なレーダーは、直径9・14メートルもある。よく見ると、この円盤はゆっくり回転している。
レーダーシステムは、方位・距離・高度を自動的に測定できる3次元レーダーAN/APY−2を搭載している。機内には14台の状況表示コンソールが配置されており、そこに敵情報が映し出される仕組みだ。
北朝鮮の弾道ミサイル発射事案を受け、レーダーやシステムを改修し、ミサイルを追尾できるようにもしている。
最新リンクシステムを使い、海上自衛隊艦艇ともネットワーク化し、敵機やミサイルの情報をリアルタイムで送れる。広域偵察機を持たない海自にとっても頼もしい相棒である。
■菊池雅之(きくち・まさゆき) フォトジャーナリスト。1975年、東京都生まれ。陸海空自衛隊だけでなく、各国の軍事情勢を取材する。著書に『こんなにスゴイ! 自衛隊の新世代兵器』(竹書房)、『ビジュアルで分かる 自衛隊用語辞典』(双葉社)など。
http://www.asyura2.com/16/warb17/msg/800.html