株式の17000円台回復と、増税延期
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2016年05月30日 在野のアナリスト
甘利前経済再生担当相が、不起訴の見込みだと伝わります。これだけ真っ黒でも、起訴できないという不名誉な事実を警察、検察も抱えることになった。官邸からの圧力があったのかもしれませんが、これほど証拠、証言のそろった事件で起訴できず、真っ黒な人物が政治の世界にのこったら、政治にクリーンさや自浄能力を期待することは不可能、ということにもなるのでしょう。いずれにしろ大きな汚点となる、最悪の結末を迎えそうです。
しかも甘利氏不起訴見通しがこのタイミングででたことは、衆参W選の可能性をうかがわせます。いくら8月が時効とはいえ、不起訴なら国会閉会後でも発表はよかったはずです。起訴だと不逮捕特権など様々な要因もからみますが、参院選公示前ならいつでもよかったのです。これだけ国会を欠席しておいて、参院選のみであっても、神奈川選挙区に入って参院自民を応援する、などということをしたら、ますますこの人物への疑惑が増す。どうせ謹慎状態で、衆院選も行わないなら、むしろ参院選後の発表でもよかったはずなのです。
現在、与党内がもめています。増税延期なら衆院解散で信を問え、というのは先送り反対派が高いボールを投げただけでしょうし、衆参Wをしても議席を減らす可能性があり、反対派もそれほど強く要求するわけでもない。ただ公明など、創価学会を説得してきたのに、いきなり梯子を外されて面子をつぶされた。こうした小さな亀裂、不協和音が目立ちはじめてきたのは、安倍ノミクスは長期化すればするほどトラブルを抱える、そんな事情が影響しています。過去に語っていた楽観が覆され、現状と整合をとろうとするとウソが増えてしまうのです。
日経平均は17000円乗せですが、いつもの日系の頑張りで、欧米の休場で閑散市場の中で上げただけです。決して増税延期を好感したものではありません。円安もイエレン議長の講演の影響、とするものもありますが、そうしたものは27日の米市場で織りこみ済み。むしろ東京市場が開いても、しばらく円が同意づかなかったのに、突然思いだしたように110円後半にするすると動きだした。今日は円安、株高にしたかったのは、週末から本格的に動きだした『増税延期を好感した』というムードをつくりたかったのでしょう。しかも市場で語られ始めた景気対策10兆円、20兆円という話は、もはや夢と現実の区別すらつかなくなったようです。
増税延期は、政治の世界だけでなく財務省を敵に回します。2年半の延期の間でさえ財源不足に陥るのに、景気対策に回す予算などない。財務省はそう突っぱねることが必定です。税収の上ブレ分、と言ってみたところで今年は円安効果の剥落で、111円ぐらいでは減益になる企業も多い。しかも今年から法人税の段階引き下げが始まる方向であり、また賃金の伸びも低いままで、ますます税収の先細り感が強い。外為特会の余剰金など、これまでに手を突っこんでしまったものもあり、隠れた財布をみつけない限り、赤字国債の発行という道に踏みこまざるを得ません。景気対策と同時に、財源は赤字国債となると市場がそれをどう判断するかも分かりません。
4月の商業動態統計では、小売業販売額が前年同月比0.8%減。今後、インバウンド消費も横ばいか、昨年より下がるとみられ、小売業にとっての逆風は顕著になるでしょう。そうなると税収全体が下がる恐れが強いのです。実は、インフレになれば金額にかかる税金である消費税も伸びる。しかし再びデフレマインドが強まる現在、低価格消費の拡大は、消費税収でさえ減っていく方向になるのです。すべてが逆回転を始めた、安倍ノミクスの悪循環の始まりです。
つまり世界で唯一、しかも国民でさえそう感じていないのに、安倍政権のみリーマンショック前の危機だと感じているのでしょう。これまでの高飛車なのに、薄っぺらな経済政策を重ねてきたツケでそうなっているとしたら、これは『傲慢ショック』という日本のみの経済的危機症状だとも言えます。安倍ノミクスの逆回転、安倍ノミクスを逆から読むと『すくみのベア』。市場もあまりの経済の失政ぶりに萎縮して、弱気になる場面が増えることを示唆しているのかもしれませんね。