雑感。サミット後の市場の動きの不透明感
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2016年05月28日 在野のアナリスト
米国でイエレンFRB議長が講演を行い、経済は引き続き改善、今後数ヶ月で利上げをすることは適切、と発言しました。安倍首相が語った「リーマンショック前の危機」などという認識は示さず、利上げ時期の言質はとらせなかったものの、早期利上げを示唆したために6月の利上げ確率が高まりました。インフレ率も原油高とドル安で解消方向、と楽観的な見通しです。
昨日、閉幕したG7で安倍氏は「一致」としましたが、IMFのラガルド専務理事をはじめ、キャメロン英首相やオランド仏大統領など、とても「リーマンショック前の危機」と、世界が共通認識をもったとは思えない。むしろ言葉は悪いですが、日本の首相がバカなことを言っている、との共通認識では一致できたようです。しかもサミット時に安倍氏が提案した資料は官僚がまとめたわけではなく、安倍氏の私的な機関でもないでしょうから、内閣府で取りまとめたはずですが、あまりに的外れで見当違いな指摘をしています。よほど経済について無知なのか、確信犯で安倍氏に恥ずかしい説明をさせたのか、そのどちらかでしょう。しかし海外紙にまで「増税延期の材料にするための提案」と看破されるなど、本当に恥ずかしい限りです。しかも日本のメディアは面と向かって批判せず、お茶を濁す程度の指摘しかしていないのですから、尚更恥ずかしいといえます。安倍氏が第一期政権で掲げた「美しい国、日本」は、第二期に入って海外から嘲笑される「恥ずかしい国、日本」となって結実した、といえるのかもしれません。
しかし英訳で「柔軟な財政戦略」とされた首脳宣言で、財政出動はほぼ望み薄です。「財政政策」ではなく「財政戦略」としたことで、政策上明示されるものでなくとも、戦略を練るだけでも達成、となるためです。そもそも論ですが、日本ではやたらと「機動的な財政政策」とフィーチャーして報じられますが、3本の矢と言っているのですから、金融政策で今後、どういった手が可能か? を論じてもよかったはずですし、構造改革について議論しないのはおかしい。結果、非常に片手落ちのままサミットは終わり、問題は今後の世界経済において、下支え役もけん引役もおらず、一体何をテーマにしていくのかがとても分かり難くなりました。
今は原油相場の回復傾向を好感する向きもありますが、原油の上昇は経済の下押し要因に違いはありません。原油相場の上昇は資源開発企業や資源国の破綻による、金融のクラッシュは防ぎますが、消費を減退させる恐れがあります。今は不動産バブルで消費も堅調ですが、欧米でも転換点を向かえそうですから、そうなると原油相場はマイナスに意識されるでしょう。
問題は、金融政策が語られなかったように、黒田バズーカもドラギマジックも、市場が期待するようなものはもう出てこない。財政出動も限られ、構造改革はさらに期待できない。新興国は政情不安に陥る国もあり、中国のようにふたたび不動産バブルを加速させ、何とかジリ貧を防ぐ国はあるものの、先の見通しは暗い。今年の後半、何を材料にして景気が回復するか、誰も答えをもち得ない中で迎えなければいけなくなりました。つまり自律的に上昇するような奇跡があれば別ですが、停滞、もしくは下方圧力が強まる状況だとも云えるのでしょう。
奇妙な『危機』説で、世界を主導できなかった安倍氏ですが、この停滞懸念をきちんと説明し、コンセンサスをとっていれば、まだ成果と言えたのでしょう。世界経済が停滞すると、一番困る国でもある日本が、意見集約する機会をみすみす逃がしてしまった。そんな印象を強くします。しかも、これまで政府、日銀が示していた経済の認識について、大きく異なる認識を示した。そんな「リーマンショック前のような危機」なら、国会を閉じずに補正予算なり、景気対策について国会は話し合わなければいけないでしょう。6月1日に閉じたら、早くても臨時国会が開催されるのは9月以後です。実は、もっとも日本が安穏と何の対策もせず、3ヶ月を空費することになるのかもしれません。一番、危機意識をもって世界に訴えた首相であるのに、です。
株式市場は6月、FRBの利上げをにらんで動くことになるでしょう。来週末の雇用統計と、その翌々週のFOMCにらみで動かざるを得ず、利上げによる悪影響と、利上げできるほどの景気回復を、どう市場に織り込むかを図りながら展開せざるを得ません。余計に経済の悪化を意識させた安倍氏、むしろ「バカなことを言っている」という認識で、正解だったのかもしれません。もしそれがコンセンサスになったら、株式市場は大きく下落せざるを得なくなるのですからね。
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