強まる“上納金”圧力 北朝鮮従業員の逃亡連鎖が止まらない
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/182075
2016年5月26日 日刊ゲンダイ
36年ぶりの党大会を終えた直後なのに…(C)AP
中国の北朝鮮レストランから従業員がまた逃げ出した。西安で働いていた3人で、すでに中国を飛び立ち、東南アジアの第三国入り。韓国を目指しているという。レストラン従業員の集団脱出はこれで2例目だ。4月には寧波の13人が逃げ、タイやラオスを経由して韓国に亡命した。国際社会による制裁強化で外貨獲得プレッシャーが強まり、「上納金の取り立てが厳しかった」などと動機を口にしていた。
北朝鮮は36年ぶりに開いた朝鮮労働党大会で金正恩を党委員長に担ぎ、体制の引き締めを図った直後。それなのに脱北続きじゃ、金正恩のメンツは丸つぶれだ。
コリア・レポート編集長の辺真一氏はこう言う。
「西安からの一行は党大会前の4月中に逃げ出し、タイに潜伏しているとみられています。表沙汰になった以上、北朝鮮は何が何でも脱北を阻止しようと動く。彼らの身の安全が危ぶまれるので、韓国政府は数日以内に迎え入れる見通しです。というのも、寧波からの脱北者をめぐって両国は対立を深めている。北朝鮮は韓国と結託した男性支配人が手引きして女性12人を拉致したと主張し、国際機関に働きかけて送還を要求している。西安のケースを許したら、説得力を失ってしまうので必死です」
■各国のレストラン従業員に禁足令
韓国は北朝鮮に残された脱北者の家族に配慮し、寧波の女性従業員の顔写真などのプライバシー情報公開を自粛。ところが北朝鮮は実名も顔写真もオープンにし、個人名を挙げ「ハンガーストライキで1人死亡した」とデマまで流している。模倣脱出を防ぐため、各国のレストラン従業員に禁足令も出していた。
資金繰りが悪化している北朝鮮にとって、世界に散らばる5万人以上の労働者は生命線だ。制裁前は各国に130店舗以上のレストランを展開し、年間4000万ドル(約44億円)を稼ぎ出していたとみられている。そのうち90店舗ほどを占めた中国で利用者が激減。中朝国境の店舗は次々に廃業に追い込まれている。
「党の指示を守れない人民は平壌に呼び戻され、処罰を受ける。レストラン従業員はそれを恐れて逃げ出した。海外労働者は同じ境遇ですから、連鎖脱北は止まらないでしょう」(朝鮮半島事情通)
北朝鮮が干上がるのも時間の問題だ。