“パナマ文書”完全公開 実名さらされた創業者たちの言い分
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/180999
2016年5月10日 日刊ゲンダイ
セレブがズラリ(右は楽天の三木谷氏)/(C)日刊ゲンダイ
パナマ文書が“完全公開”され、実名がさらされることで、ネット上の風評被害はさらに燃え広がりそうだ。
個人名ではこれまでにセコム創業者の飯田亮氏や楽天の三木谷浩史氏、UCC上島珈琲グループ最高経営責任者の上島豪太氏などが挙がっているが、セコムは「税務当局に詳細な情報開示を行って、適正な税金を納めている」。楽天によると、三木谷氏は楽天を起業する以前の投資で、「まったくやましいところはない」などと話しているという。
UCCも「純粋なビジネスであり、個人も会社も合法的に納税を行っている」と回答。本紙の取材にいずれも租税回避目的を否定している。
ほかにも、都市経済評論家で内閣官房参与の加藤康子氏の名前も挙がったが、加藤氏は「心当たりがない」。タックスヘイブンを利用すること自体は合法とはいえ、それで国民が納得するかといえば、話は別だ。
「セコムの飯田氏は92年に、すでに亡くなった共同創業者と英領バージン諸島に設立した法人で、当時の時価にして約700億円の株式を管理していたとされる。それで贈与税や相続税が圧縮されたと多くの専門家はみています。それでなくても租税回避地は脱税や粉飾決算、資金洗浄の温床と指摘されているだけに、利用しているというだけで色眼鏡で見られてしまう。実際、ネット上ではUCC製品の不買運動をあおる動きも出てきています」(経済ジャーナリスト・岩波拓哉氏)
〈別表〉は、ICIJに参加している共同通信の分析を基に、パナマ文書に載っている個人を都道府県別にリストアップしたもの。これはまだ一部だ。金沢医科大の名誉教授など“セレブ”の他に、指定暴力団「稲川会」に近いとされる企業代表者や、悪質な出会い系業者が課税逃れで利用したとみられるケースもあるという。
当然、日本の国税当局は、記載された日本のものとみられる法人や個人について適正に納税しているか確認を進め、条約に基づいて各国と情報交換、必要に応じて税務調査も行うという。
「(パナマ文書の)報道を関心を持って見ているし、課税上問題が認められれば、税務調査を行うことになると思う」
先月26日の衆院財務金融委員会で、星野次彦国税庁次長はそう答弁。別の同庁幹部は取材に、一連の動きを注視していることを認め、「当然興味はあるし、調べる」と意気込むが、どこまで切り込めるかには疑問符が付く。
パナマ文書でセレブの課税逃れに対する世界中の批判が高まったのを機に、米政府は新たな規制強化案を発表するなど対策に乗り出しているが、安倍政権は具体的な対策を打ち出すでもなく、まるで他人事だからだ。
パナマ文書を提供したジョン・ドウ(仮名)なる人物は、富裕層の腐敗が資本主義を崩壊させ、デジタルによる革命を引き起こす可能性があるなどと論じていた。せっせと納税している日本の庶民の怒りが爆発したとしてもおかしくない。