日銀会合の結果次第では、利益確定売りのきっかけになりそうだ(撮影:尾形文繁)
日本株「底放れ」のタイミングは整いつつある 注目すべき3つの「B」から探る相場のゆくえ
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中村 克彦 :みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト 東洋経済
日本株が底放れしてきた。過度な原油安と円高が一服し、足元では一時1万7500円台まで急回復する場面もあった。これは日銀がマイナス金利導入発表した3カ月前の水準まで戻したことになる。注目すべき3つの「B」が浮かんでくる。このまま日本株は戻りを強めていくのか、今後の見通しを探ってみた。
■底放れ(Bottom out)してきた日本株
4月21日、日本株は底放れを示唆するラインを上回ってきた。まずは上値抵抗ライン。2015年12月高値2万0012円と2016年3月高値1万7233円を結んだ右肩下がりのダウントレンドを脱してきた。テクニカル面からみると、2015年12月高値2万0012円から2016年2月安値1万4952円までの下げ幅に対しての自律反発が想定される。短期的な戻りメドとして、61.8%戻しや3分の2戻しとなる1万8000〜1万8300円台が挙げられる。
次に底入れ確認となるネックライン。ダブルボトム(2月安値1万4952円と4月安値1万5715円)に対する3月高値1万7233円も上回ってきた。これは需給における分水嶺を指す。原油安や円高に乗じて日本株を売っていた投機筋は、足元で損失限定の買い戻しを迫られているもよう。今後の展開として、@ネックライン前後へ揺り戻し(小休止)、A売買増大(買い戻し)、B株価の上放れ(踏み上げ)をたどることが想定される。仮に一段高となった場合、中期的な戻りメドとして1万8700〜1万9500円台も挙げられる。
■日銀(BOJ)の追加緩和効果は限定的か
2016年1月末、日銀がマイナス金利導入発表した。預貯金の妙味減退のあおりからホームセンターでは耐火金庫が売れていると揶揄されていた。しかし、足元の日経平均株価はその3カ月前の水準に戻ってきた。
「Buy the rumor, sell the fact」〜うわさで買って、事実で売る〜
日銀の5年超にわたる指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れ総額は8兆円超(推定時価ベース)となり、国内上場ETF全体の5割超に達している。そのなか、4月28日の日銀金融政策決定会合で追加緩和期待が高まり、ETFの買い入れ枠を拡大すると予想されている。また日銀審議委員の入れ替えなど地ならしを進めつつ、夏の参院選に向けて株価の下支え策を整えている。
しかし、東京市場は日銀会合直後に大型連休に入る。緩和策の中身次第では上値追いの効果が限定的にとどまることや、いったん利益確定売りのきっかけにもなるだろう。5月上旬には国内企業の決算発表が相次ぐ。ある程度の収益鈍化を織り込んでいると思われるものの、市場参加者は積極的な上値追いに慎重となろう。
■景気循環(Business cycle)からの視点
景気循環から日本株の底入れ時期が近づきつつある。戦後の景気循環において第2〜第15循環を平均すると拡張サイクルは36カ月。一方、縮小サイクルに目を移すと、短くて7〜9カ月(第8循環の円高不況や第15循環の欧州危機)、平均すると16カ月となる。日経平均株価を振り返ると、2012年6月(8295円)から2015年6月(2万0868円)まで36カ月の株高局面に至ったのち、足元まで10カ月の株安局面が続いている。
短期的に日銀会合の結果次第では利益確定売りのタイミングと思われる。ただ、2016年の日経平均株価を振り返ると、年初来マイナス2割程度となる1万5000円台まですでに2度下げている。中国株安、原油安、円高懸念等をある程度織り込みつつ、ここから下値を大きく売り込むことは限られそうだ。
中期のチャートでは上値抵抗ラインとネックラインを上回り需給改善の兆しがみえるなか、長期の景気循環からみても底放れする条件は整いつつある。今夏の参院選を控えて補正予算や消費増税先送りへの期待も根強い。今後は東証1部売買代金の増大がポイントとなろう。3つの「B」に目配せしつつ、2015年の1日当たり平均2.55兆円を上回ってくるか注目したい。