国際社会が安倍政権の言論弾圧に危機感を抱いている
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2016年4月15日 孫崎享 日刊ゲンダイ 文字お越し
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国連人権理事会が任命した特別報告者で「表現の自由」を担当するデビッド・ケイ米カリフォルニア大教授が12日に来日した。目的は、国連自由権規約委員会が懸念を表明した特定秘密保護法の実施や、インターネット上の権利、報道の自由、知る権利などを評価する――ためだ。
もともと昨年12月に来日する予定だったが、突然、延期となっていた。受け入れを“拒否”した外務省は延期の理由として、「予算編成などのため、万全の受け入れ態勢が取れない」と説明。そして本年9月以降の受け入れを提案していたのである。まったくふざけた話だが、意図は明確である。日本政府が7月の参議院選挙前に報告書が公表されるのを嫌ったのである。
毎日新聞(10日付)のインタビュー取材に応じたケイ教授はこう語っている。
〈安全保障に関わることだからと政府が秘密指定し、(国民が)情報を入手できなくなることを懸念している〉
〈もし政府が放送局に特定の観点を強要することがあれば問題。公平とは何か。常に政府側の見方なのか。政党の主張を述べないことなのか。テレビキャスターが交代した話題も関心がある〉
日本が民主主義国家であるなら、本来、こうした問題は日本社会が自ら調査し是正すべきである。ところが、今や大手メディアは安倍政権の「御用メディア」と化し、そんな姿勢はみじんも感じられない。政治の場にもそういう力が働かない。
嘆かわしいことだが、国連の力を借りなければ、日本国民に覚醒を促せないのが今の現実なのである。日本に「報道の自由がなくなりつつある」という懸念は米国内でも広がっている。米国政府に比較的近いとされているワシントン・ポスト紙が3月、社説でこう指摘していた。
〈アベノミクスの動向は良くはない〉
〈安倍氏だけは悪い話が出ても批判されない〉
〈政府およびその支持者たちによる公式、非公式のメディアに対する圧力がある〉
〈戦後の日本が最も自慢すべきは経済的発展ではなく、独立したメディアを含む自由な機構の設立であった〉
〈安倍氏の目標はメディアの自由の犠牲のもとに行われるべきではない〉
今の日本は皮肉なことに「自由」と「民主主義」を“標榜”する「自民党」の下で両方を失いつつある。