パルナッソス・インベストメント・ストラテジーズの宮島秀直チーフストラテジスト(撮影:尾形文繁)
「夏にオイルマネーの売り懸念も、年末に向け一時1万9000円回復へ」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160412-00113330-shikiho-biz
会社四季報オンライン 4月12日(火)16時51分配信
4月に入ってから株価下落が止まらない日本市場。今後の行く末を左右するのは巨額の資金を運用する外国人投資家だ。海外ファンドの動きに詳しい、パルナッソス・インベストメント・ストラテージーズの宮島秀直チーフストラテジストに動向を聞いた。
――世界の機関投資家の動きはどうか
今後の日本株にとって、引き続き、オイルマネーの売りが下落圧力になるだろう。原油価格下落を抑えるため、産油国は増産凍結に動いている。だが、核問題をめぐる経済制裁が解かれたばかりのイランが増産凍結に強硬に反対しており、価格低迷は長引きそうだ。仮に原油価格が1バレル35ドル前後の水準で推移した場合、今年の原油輸出額はサウジアラビアだけで約7兆円減少することになる。
その減少分を補填するため、産油国は保有している株を売却することになる。中東の政府系ファンドの日本株式組み入れ比率を勘案すると、まだ、2兆円を超える日本株が売りに出される懸念がある。参議院前に景気対策が実施されることを見込んでいるため、足元の動きは激しくないが、選挙後の7月下旬から一気に売り込んでくるだろう。
――オイルマネー以外の動きはどうか。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は非常に元気。政府からの要請のもと、どんどん株式を買うだろう。7月からオイルマネーの売りで株価が下がったとしても、秋口からはGPIFの買いが入り、年末に向けて日経平均1万9000円台まで回復すると見ている。
だが、それで終わりではない。世界中の投資家が「リスク要因の本命は中国経済」と考えている。今の中国は、鉱工業生産、地方から大都市への人口流入、不動産開発投資のそれぞれの伸び率がそろってゼロに近い水準になっている。一方、銀行を介さない金融取引はさまざまな形に姿を変えて急増を続けている。1月に行われた中国人民銀行(中央銀行)の資金供給も、最終的には破綻寸前企業に貸し付けられた可能性が高い。
高まる中国リスクへの忌避感から、日本株でもダイキン工業 <6367> やオムロン <6645> などの中国依存度が高い銘柄の株価下落が顕著だ。特に、村田製作所 <6981> を初めとした電子部品銘柄は、中国依存とスマホの減速がダブルパンチとなっており、投資家の目は非常に厳しい。株価は一時的に1万9000円まで戻したとしても、年明けにかけて中国リスクが顕在化すれば“三日天下”に終わる可能性が高い。2017年からは再び厳しい状況になるとみている。
――ドル円相場を見ると円高ドル安傾向が続く。為替はこれからどう動くか
短期的に見ると、急激なドル高円安への転換は難しいだろう。各国における金融政策の行き詰まりもあるが、米国ではドル高に進むことによる輸出の減少、および失業者増への懸念があるからだ。大統領選が正念場を迎えつつあるが、民主党も共和党も、いずれもドル安誘導をますます強くしていくことが予想される。
しかし、為替の動向は、中期的には米国の利上げの状況に左右される。今年2月まで後退の一途にあった米連邦準備制度(FRB)の利上げ姿勢だが、3月に入ってから期待インフレ率が急上昇しており、再び利上げ機運が高まりつつある。もし年内に2回の利上げが実施されれば、ドル円レートは再び115円まで円安に戻ることもありそうだ。
――こうした環境下での銘柄選びのポイントは。
今、海外投資家間で人気があるのは、内需の割安株。特に、中国依存度が低く、オイルマネーの投資対象となっていない銘柄は、今後も伸びるだろう。たとえば、産油国には豚肉を禁忌とするイスラム教圏の国が多い。なので、日本ハム <2282> などの食肉会社にはオイルマネーが入りづらいという安心感から、ディフェンシブであると同時に売りリスクも小さいとして、買いが入っている。
また、マイナス金利を背景に、REIT(不動産投資信託)への注目も高まっている。先にマイナス金利を導入した欧州では不動産投資が活発化しており、日本でも同様のことが起こる可能性がある。日本の地価に割安感を感じている投資家は多い。
(聞き手『会社四季報プロ500』編集部 渡辺拓未)
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
渡辺 拓未