雇用者の年齢別人口分布(写真:産経新聞)
40代サラリーマン「社内失業」危機 バブル期と団塊ジュニア大量採用したツケ…
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160410-00000518-san-bus_all
産経新聞 4月10日(日)12時20分配信
「次世代シニア」と呼ばれる40代のサラリーマン向けにキャリア研修を行う企業が増えている。会社人口で突出するこの世代は、厳しい出世競争にさらされ、モチベーションを失って“社内失業”状態になってしまうリスクも高い。その特性と傾向を、人材育成の専門家に聞いた。
「アベノミクス以降、主に40代向けの『ネクストキャリア・デザイン講座』の依頼が増えました」と話すのは、キャリア研修などを手がける「アチーブ人材育成」(大阪市)代表の諌山(いさやま)敏明さんだ。現在は同講座を企業や地方自治体、官公庁など年間200回近く開く。
現在の40代の中心は、1980年代後半〜90年代初頭のバブル期に社会に出た世代(昭和42〜45年生まれ)と団塊ジュニア世代(46〜49年生まれ)。前者は好況時の大量採用のため、後者はもともとの人口が多いために、会社人口のなかで大きな「こぶ」を形成している。
諌山さんは「今の40代は定年後、65歳を超えても働く、という意識がとても強い。不況の中でポストが減らされ思うように出世できず、老後の生活資金に不安があるからです。一方で、年齢を重ねても働くために今から準備している人は限られます」と分析する。
すぐ下の「ロスジェネ」と呼ばれた30代は、新卒時に就職氷河期に直面したため、多くの企業で相対的に人数が少ない。結果、現在の40代は部下や後輩を持ちにくい状態で、それぞれの現場で奮闘してきた。諌山さんは「仕事への責任感は強いが、何でも自分でやってしまい、後輩を育てるという意識が低い。コーチング能力、コミュニケーション能力に欠け、さらに先が見えてしまうので、仕事に対するモチベーションも下がってしまう。『なぜその仕事をしているのか』という問いに答えられない人も少なくない」と手厳しい。
■パワハラの加害者にも
諌山さんがコンサルティングを担当した地方金融機関に勤める40代の男性は、まさにそんなケースだった。支店長代理というポジションについたものの、直属の部下はおらず、周囲と上手くコミュニケーションが取れずに、職場で浮いてしまう。そんな男性に、できる限り毎日職場の全員と10分間何らかの会話や面談をすることを勧めた。男性は戸惑いながらも、後輩たちに積極的に話しかけることで、徐々に職場の雰囲気がよくなったという。
諌山さんは「すぐ下のロスジェネを『受け身、指示待ち』と批判的に見ている人も少なくない。でも、30代にしてみれば、与えられた条件のなかで堅実にやっているという人も多く、新しいことに対応できる柔軟性もある。下を批判するだけでは、パワハラの加害者になってしまうこともある」と警告する。
■専門性だけではダメ
リクルートワークスは2年前、この世代を「次世代シニア」と定義し、その行く末に警鐘を鳴らした。ポストが減ったために出世できずモチベーションを失ってしまえば、“社内失業”の揚げ句、再就職は望めなくなる。専門性を高めてスペシャリストを目指す人も多いが、多くの場合、専門的な知識や経験だけではどこの会社でも通用する人材にはなれない。
「働き続けるためにパソコンやIT、語学といった多くの企業で必要とされるスキルもそうですが、何よりもコミュニケーション能力や情報収集力などを磨きエンプロイアビリティー(雇われ能力)を高めておくべきです。自分のキャリアを会社に任せず、自分で考える意識改革が不可欠」と諌山さん。研修では、現状をデータで示したうえで、自身を見つめ直し、「キャリアの棚卸し」をして、強みと弱みを知ってもらい、自身で将来を考える姿勢を身につけられるよう工夫しているという。
近い将来、“下流老人”にならないために今から準備が必要だ。(戸谷真美)