消費動向調査と景気ウォッチャー調査
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52791258.html
2016年04月08日 在野のアナリスト
栃木の小1女子児童が誘拐され、殺害された事件の裁判で、宇都宮地裁は無期懲役の判決を下しました。今回は取調べのビデオ映像が証拠として提出されましたが、最低でも弁護士は映像をすべてチェックでき、反論できるようでないと片手落ちでしょう。検察官の威圧、誘導が確認できるかどうかは、映像をすべてチェックしないと判然としない。一部だけ切り取って編集されてはダメなのです。取調べの映像は検察のためだけにあるのではありません。検察、弁護士、双方のダブルチェックがあって、双方が証拠として用いることができて、初めて機能するのですから。
3月の消費動向調査が発表され、項目すべてで改善、指数も前月比1.6pt上昇の41.7となりました。しかし2月に大幅悪化した分をとり戻せておらず、3月は株価の落ち着きもあって判断が改善したものとみられます。株価が上昇を促したなら、4月はふたたび悪化するかもしれません。少し気になるのは、物価見通しで上昇する、と回答した割合がじわりと増えた点です。2%未満の物価上昇をみこむ割合が、ここ半年で最多となっており、低インフレを予想する人が増えてきています。
3月の景気ウォッチャー調査は、現状判断DIが45.4と前月比0.8pt改善。項目別でも小売以外がじわりともどす形です。先行き判断DIが46.7と前月比1.5pt悪化。こちらは項目すべて悪化です。地域別でみると現状は近畿圏以外がすべて改善、逆に先行きは北海道以外がすべて悪化。北海道が改善したのは、新幹線効果を期待した面が大きかった。ただ現状、乗車率が低いなど、思ったほどの効果は上がっていません。全体でみると、3月は株価も小康、為替市場も落ち着き、どこまで落ちていくか、という不安もあった2月よりはかなりマシ、という判断が目につくようです。
しかし今の株価は16000円を割れ、為替も108円台。ただ今日の株価は日系、米系の2社が買い一辺倒でワンツーを決める、という買いの特異日にあたり、マイナーSQなどの諸々が重なって反発したものの、Fリテの急落のように輸出企業ばかりでなく、小売関連の業績にも不安を抱えます。反発力も弱く、マイナーSQを除くと2兆円かつかつの売買代金は、上値の重さを意識させる。為替市場も「麻生財務相の発言で…」などと反発の理由も語られますが、昨日まで政府要人の発言は無視して、今日になって急に意識することはないでしょう。本邦勢による円売りが入って、買い方の利益確定売りがでたに過ぎません。買い方にとって今はまだ本格的にケンカするタイミングではなく、じわじわと円の水準を切り上げておく。本邦勢は年度の切り替えで、為替予約を入れるタイミングもあって、円高は容認できない。奇妙な思惑の一致があっての切り返しです。
ただ2月の国際収支状況は2.5兆円近い黒字。恒常的には円高圧力がかかり易い地合いに変わりないのです。しかし貿易収支をみても、前年同月比で輸出が5.5%減、輸入が14.6%減。確かに昨年の原油相場はWTIで1バレル50$、今年は32$、為替は昨年が対ドルで119円、今年は114円ぐらいですから、その影響があるとはいえ、輸出も輸入も減少するのは、国内経済の低迷を意味します。さらに気になるのが、国際金融収支で対外直接投資が増えていること。今の円高で、この部分が相当に傷んでいるとしたら、内需はさらに冷えこんで行くことも予想されます。
最近、どの統計でも目立つのが需要不足です。景気が悪いことがよりはっきりしてきて、世界全体が情報統制、政府首脳への個人崇拝を高めて国家を引き締めにかかっている。中露などまさにそうです。翻ってこの日本でも、安倍政権はそうした手法が目立ちますが、残念なことに実体経済の悪化が、その悪い夢から国民の目を覚まそうとしています。そうして個人崇拝を高めよう、との試みは国内を引き締めても、外国人投資家は逃げ出していく。マネーの逃避と、政府首脳への信頼と。そのバランスが崩れると日本のように、政府首脳への不審が一気に高まってしまうのでしょう。政府の政策の可視化、それをメディア、国民がダブルチェックできる仕組みがない限り、政治と経済は双方のバランスを崩し易い、ということでもあるのでしょうね。