消費税軽減税率は年収多い世帯ほど得する額が大きい
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160317-00000001-pseven-soci
週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号
税法学者、経済学者、税理士らが「税制を主権者である納税者の手に取り戻そう」と昨年2月に発足したのが「民間税制調査会(以下、民間税調)」だ。三木義一・青山学院大学法学部教授(専門は租税法、弁護士)と水野和夫・日本大学国際関係学部教授が共同代表を務める。
民間税調は1年間の議論を経て、独自の「2016年度税制改革大綱」を発表。そこから浮かび上がったのは、日本の税制に隠された嘘だ。その一つが消費税の軽減税率は弱者救済ではないというものだ。
政府は来年4月実施予定の消費税率10%への引き上げに合わせて、生鮮食品と加工食品、新聞などの税率を8%に据え置く「軽減税率」を導入する。
消費税には所得が少ない人ほど負担が重い「逆進性」があることから、食品の税率を低くして「低所得者層の負担を軽くする」というのが政府の説明だ。しかし、三木教授は、「軽減税率は弱者救済にはならない」と指摘する。
「軽減税率に逆進性をなくす効果はありません。低所得者の負担増がほんの少し軽くなるくらい。一方、それによって高所得者の負担が重くなることはない」
財務省の試算でも、年収200万円未満の世帯では、軽減税率導入によって年間約8300円負担が軽くなるだけ。年収1000万円世帯なら約1万5700円の負担軽減。年収が高い世帯ほど得する額が大きく、逆進性は解消されない。
もうひとつ、軽減税率の大きな問題は新たな税の歪みを生むことだ。
「軽減税率は業者にとって大きなメリットがある。そこで各業界が軽減税率の対象にしてもらおうと、自民党税調への陳情に殺到するでしょう。政治家はその代わりに票をもらうことができる。軽減税率は新たな政治利権を生むことになる」(三木氏)
弱者救済ではなく、政治の線引きによる業界救済のための税制なのである。