独メルケル首相が、EUを崩壊させているという事実
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2016年3月7日 MAG2NEWS
EUの盟主とも言われるドイツ。そんな欧州の大国の首相・メルケル氏に「共産主義者疑惑」が囁かれ続けているのをご存知でしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、ロシアの報道や池上彰氏らの書籍の内容などからその噂を検証、さらに「メルケル氏がEUを崩壊に導く」との考察を記しています。
■共産主義者(?)メルケルが、EUを滅ぼす?
2013年の秋、クロアチアの都市ザダルからコルナチ国立公園に船で行きました。船の中で、ドイツ人老夫婦2組と知り合いました。「バイエルン州から来た」といってましたが。
政治の話で盛り上がったとき、私は「メルケルさん、すごいですね」といいました。すると、老夫婦はにっこり微笑みつつも、「ダメダメ! やつは共産主義者だ!」といいました。私は、「メルケルさんは東ドイツで育ったから、そういわれるのかな?」と思いました。しかし、ドイツ人老夫婦がいった、「メルケルは共産主義者」という言葉は、深く脳裏にやきついたのです。
■ロシアメディアは、メルケルと旧東ドイツ諜報機関の関係を報じる
2014年3月、ロシアはクリミアを併合。欧米+日本は、ロシアに対し経済制裁を発動します。正直、アメリカとロシアの経済関係は、ほとんどないに等しい。しかし、ドイツとロシアの経済関係は、とても深い。ドイツは、ロシアにエネルギーを依存してもいます。それで、ロシアは、「経済的利害関係」が一致しているドイツを動かして「制裁を解除してもらおう」とする。ところが、メルケルさんはなかなか動きません。
そういうことがあるたび、ロシアの国営メディア(RTR)では、「メルケルは、旧東ドイツの諜報機関とつながりがあった。アメリカは、その証拠を握っていて、メルケルを脅迫している。だから、メルケルは、アメリカのいうことを聞くしかないのだ」といった解説がされていました。私は、そういう話を聞くたび、クロアチアであった老夫婦の言葉を思い出したのです。
■佐藤優さんも、「メルケル=共産主義者」を疑う
そして先日、私は池上彰さんと佐藤優さんの対談本「大世界史」を読んでいました。この本の122p〜123pにかけて、メルケルさんの話があります。
メルケルさんのお父さんは、ルター派の牧師でした。故郷は西ドイツのハンブルグだった。60年代末、東西ドイツの行き来が難しくなり、メルケルさんのお父さんは、西ドイツに戻るか、東ドイツにとどまるか選択を迫られます。
牧師仲間はほとんど西ドイツに行きましたが、メルケルさんのお父さんは東ドイツにどとまりました。それで、メルケルさんのお父さんは、「共産主義体制に好意的だった」のであろうと。
そして、佐藤さんから、こんな発言が出ています。
アメリカのCIAからすると、メルケルは、共産主義者で、「加入戦術」をやっているように見える。
(122p)
池上さんが、すかさず「加入戦術」の用語解説をします。
池上:自分の思想を隠して組織に入り、やがて乗っ取ろうとする戦術ですね。
(同上)
そして、佐藤さんがアメリカ、CIAの意図を解説します。
佐藤:メルケルは、東西ドイツ統一後にキリスト教民主同盟に入党したけれども、根っこでは東ドイツの価値観が身についている。だからこそ、あえて反共的な党に入ったのではないか、と。
(123p)
CIAはメルケルさんに疑念を抱いているので、ある行動をしています。
池上:スノーデン事件で暴露されましたが、だからこそ、アメリカはメルケルの電話を盗聴していたのですね。
佐藤:アメリカは、理由なしに盗聴をしません。何らかの疑念がもたれていることは間違いない。単にドイツの首相だから盗聴したのではなく、米国は、メルケル個人の来歴に疑念を抱いていると思います。
(同上)
なるほど〜。メルケルさんは、共産主義者なのでしょうか? それで、とても「親中国」なのでしょうか?それとも、ただ「儲けたいだけ」なのでしょうか?
■メルケルさんは、EUを崩壊させている
メルケルさんが共産主義者なのか、断言はできません。それはともかく、彼女の決定が原因で、EUは崩壊しつつあります。理由は、皆さんご存知ですね。「難民問題」です。去年1年間で、ドイツに100万人強の難民がやってきた。シリア、イラク、アフガン、リビアなどからです。特にシリアからが多い。
それでEU諸国は、「俺たちは、もう難民入れたくない!」とごねている。ごねているだけでなく、いくつかの国は、国境に鉄条網をつくり、隣国から難民が流入してこないようにしています。
なぜこれが、「EUの崩壊」につながるのでしょうか?
EUは、1つの国のように、人、物、金の行き来が自由になっている。人の流れは、「シェンゲン協定」で定められています。EUのほとんどの国は、この協定に加盟している。それでEU内なら、まったく「1つの国内」にいるがごとく、隣国から隣国に、なんの検査もなく移動できる。
ところが難民問題に対する立場の違いから、隣国との国境を封鎖し、「入国管理」がどんどん復活している。つまり、EUの柱の1つである、「人の往来を完全に自由にする」は、事実上崩壊しているのです。
1つ例をあげましょう。難民が来る、もっともポピュラーなルートは、トルコとギリシャです。この2国に上陸して、豊かなドイツを目指す。現在ギリシャには、「1日2,000人」(!)の難民が来ているといいます。
ところが、隣国マケドニアが、国境を封鎖してしまった。それで、難民たちはマケドニアに抜けることができず、ギリシャ国内に封じ込められてしまった。そのギリシャは、皆さんご存知のように、事実上の「国家破産状態」にある。失業率は27%(!)で、難民に仕事を与えるどころか、自国民も働く場所がない。
それで、かわいそうな難民たちは、住む場所も提供されず、路上生活をしているのです。こういう悲惨な現状について、EUでもっとも影響力のある政治家メルケルさんが非難されています。
解決策は明らかで、難民が祖国に帰れるよう、祖国の復興を支援すべきなのです。すでに来ている難民の衣食住を保証するのは、人道的に当然ですね。
ところがメルケルさん、いまだに、「EUは、人口5億人もいるのだから、数百万の難民を受け入れられないはずがない」などといっています(つまり、「もっと受け入れる」と宣言している)。
彼女は忘れていることがあります。100万〜200万というのは、「1年間で」です。この状態が10年もつづけば、難民は「数千万規模」になる。いったいどうやって住居を提供し、食べさせていくつもりなのでしょうか?
いずれにしても欧州は、「難民問題」があまりにも深刻で、他のことが何もできない状態になりつつあります。
私は、かなり前から、「欧州キリスト教文明はイスラム移民で滅びる可能性がある」と書いてきました。「大量難民問題」の発生で、そのプロセスは加速しているようです。
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『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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