緩和マネーが不動産市場にドッと流れている(C)日刊ゲンダイ
「マイナス金利」で現実味おびる不動産バブル“再過熱”
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2016年2月23日 日刊ゲンダイ
杭打ち不正問題、タワーマンションの節税規制、外国人投資家の日本離れなどの逆風で、バブル崩壊“秒読み”とされていた不動産業界に異変が生じている。黒田日銀のマイナス金利政策で、銀行による住宅ローン金利の「低金利競争」が始まったからだ。
今月19日、三菱東京UFJ銀行は10年固定型の最優遇金利を0.25%引き下げ、3メガバンクで最低の0.8%にすると発表。地銀も負けじと追随している。
15年の不動産関連の新規貸し出しはバブル期を超え、26年ぶりに過去最高を記録した。すでに“天井”という見方も根強いが、さらなる“バブル過熱”はあるのか−−。参考になるのが、3年半前にマイナス金利を導入したデンマークだ。住宅ローンの金利自体がほぼゼロなだけでなく、さらに一部で“利息”に近い形で利用者に特典がつくものまで登場。首都コペンハーゲンの住宅価格はグングン上昇し、40〜60%も高騰した。つられて昨年のアパートの家賃も前年比で平均12%程度も上がっている。
■“借り得”プランを金融機関が打ち出せば…
過熱ぶりに慌てたデンマーク政府は昨年11月に住宅ローンの融資規制に乗り出したほどだ。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が言う。
「デンマークのように『借り得』のプランを日本の金融機関が打ち出したら、不動産市場を取り巻く状況はガラッと変わるかもしれません。東京と大阪の都心部で起きている局所的バブルが埼玉、千葉、神奈川、奈良など郊外にまで波及するでしょう。バブルは『崩壊寸前』から一転、『過熱』へ逆戻りする可能性があります」
年末ローン残高の1%が10年間、最大400万円が所得税から控除される「住宅ローン減税」も3年後に終了する。慌てて、マンション購入を検討し始めたサラリーマンも多そうだ。
「いくら金利が安くなったとしても、バブルには必ず終わりがある。住宅の適正価格を見る指標のひとつに、新築マンションを賃貸に出した際の平均利回りがあります。都心部では5%程度が“健全値”のところ、現在は2%台半ばの水準にまで下がっています。90年初めの平成バブルの時につけた1%台に近づくのは時間の問題でしょう。はじける時は一瞬ではじけるのがバブル。資金的余裕がないのに、欲を出して無理な住宅ローンを組むことは絶対に避けましょう」(榊淳司氏)
少子高齢化の影響で、数年後には必ず住宅がダブつく。
ディベロッパーの口車に乗せられて高値づかみをすると、残るのは膨大な借金だけだ。