映画『残穢 −住んではいけない部屋−』公式サイトより
竹内結子の映画『残穢』でも話題の不動産「事故物件」の実態! 住宅ロンダリングに騙されない方法とは
http://lite-ra.com/2016/02/post-1993.html
2016.02.20. 事故物件と住宅ロンダリング実態 リテラ
山本周五郎賞を獲得した小野不由美によるホラー小説『残穢』(新潮社)が、中村義洋監督、キャストに竹内結子、橋本愛を迎えて映画化され話題を呼んでいる。
その映画『残穢 −住んではいけない部屋−』のテーマは「事故物件」。怪奇現象が起こるアパートの過去を探っていくうちにさまざまな恐怖に巻き込まれていくというストーリーだ。
もともとは不動産関係者の間で使われている専門用語だった「事故物件」という言葉が広く知れ渡ったのは、事故物件公示サイト「大島てる」の存在が大きい。サイトには現在4万件近くの事故物件情報が登録されている。しかし、それだけ大量のデータを集積しているのにも関わらず、これでもまだまだ一部でしかなく、日本には他にも大量の事故物件が潜んでいるのだ。
そもそも事故物件とはどのような物件なのか。『事故物件サイト・大島てるの絶対に借りてはいけない物件』(主婦の友インフォス情報社)には、その知られざる全容が記されている。
自殺や他殺などの事故や事件が起きた物件は「事故物件」とされ、次の入居者にとってはその過去が目に見えない心理的瑕疵となるため、不動産会社はその旨を告知する義務が生じる。病死などの自然死に関しては通常告知義務は発生されないとされているが、発見が遅れて腐敗が進んでしまったケースでは事故物件として見なされることもある。
現在、我が国では年間約2万5000人が自殺している。そのうち約半数は自宅で自死にいたるため、単純計算でも、毎年1万3000戸近くの事故物件が生まれていることになる。また、孤独死の増加により、亡くなってから遺体が発見されるまでに長期間かかるケースも年々増えている。こういった背景もあり、よく調べないで入居するとそこが事故物件で、非常に不気味な思いをする可能性は高くなっている。
ただ、前述の通り、こういった心理的瑕疵のある物件に関して告知義務を怠れば宅建業法の違反となるため、不動産屋で借りる時は必ずその旨を告知されたうえ、通常よりも2〜3割ほど安い家賃で貸し出されることになる。
しかし、そこには大きな穴がある。「事故物件の告知義務は、次に入居するひとり目のみ」という業界ルールが存在するのだ。事件が起きた住人との間にひとりでも別の住人が住めば心理的瑕疵は薄まると過去の裁判例でも認められているため、このルールを適用している業者も多い。そこで横行しているのが「物件ロンダリング」だ。
一例をあげれば、事件が起きた後、管理会社の社員がその家を短期間契約する。そうすれば、次の住人には告知義務が発生しないため、通常通りの家賃で貸し出せるというわけだ。
また、ひとり目だけ「定期借家」で貸し出すという方法もある。定期借家は、転勤中や取り壊し前など、期間限定で家を貸し出したい時に用いる制度。これを使い、一人目の住人には告知をしたうえで安い家賃で貸し出し、次の住人に対しては告知もせずもとの家賃で貸し出すのだ。
こうして隠蔽されてしまえば、住まい探しの段階で我々がその物件の暗い過去を見抜くことは不可能だ。また、隣家など周辺の住宅であれば告知義務は発生しない。では、どうすればその物件が事故物件だと見抜くことができるのだろうか? 確実ではないが、いくつか見抜くためのヒントはある。
まずは、マンション名である。大きな事件が起きたマンションなどの場合、ほとぼりが冷めた後に外壁の色を変え、マンション名も変更させることがある。それにより暗いイメージを変え仕切り直しを図るのだ。検索に引っ掛かりにくくする効果なども期待できる。
例えば、「江東マンション神隠し殺人事件」で知られる江東区潮見のマンションがそのような方法をとっている。2008年、このマンションに住む20代の女性会社員が突然失踪、捜索願も出されたが、監視カメラの映像に外出した記録がないことから「神隠し事件」としてメディアで話題となった。その後、同じマンションに住む男が逮捕される。その男が彼女を拉致したうえ殺害。さらに遺体をバラバラにしていた。この舞台となったマンション「フィットエル潮見」は事件発生時、竣工からまだ半年も経っておらず3分の1近くがまだ空き室状態であったため、後日「スクエア潮見」への改称を余儀なくされている。
あとは、リフォームの痕跡からも、そこが事故物件であったかどうかの疑いをもつことができる。これには二つのパターンがある。一つは、風呂やキッチンなど、部屋の一部分だけがリフォームされているケース。これは血など体液による汚れを取り除くためにリフォームが行われたと推察することができる。もう一つのパターンは、集合住宅のなかで、その一室だけがフルリフォームされているケース。この場合は、過去にその部屋で火事が起きている可能性もある。このような場合は、一度不動産屋に聞いてみた方が良い。
以上述べてきたように、一度事故物件になってしまうと、売り主、大家、不動産会社はその家の過去のために大変な苦労をするのだが、なかには住宅として使うのを諦めてしまうケースもある。その場合、事務所専用として法人向けに貸し出したり、撮影スタジオとして生まれ変わることが多い。利便性の高い駅近マンションでまわりは賃貸や分譲の部屋なのに、一室だけそのような使われ方をされていたら、過去に何かがあった可能性はゼロではない。
今の時代、ネットで簡単に検索できてしまうため、「事件から10年間は告知するようにする」、「同じフロアで起きた事件であれば告知する」など、旧来のやり方を見直す業者も出始めてはいる。しかし、それもまだごく一部。
いくら気にしない人でも、いざ入居した後にそのような事実を知ってしまったらなんだか居心地はよくないもの。不動産屋から出される情報を鵜呑みにすることなく、自分でもいろいろと調べてみることが最善の回避策なのかもしれない。
(新田 樹)