購入客がスーパーに返した問題のビーフカツ (c)朝日新聞社
安すぎる納豆、豆腐… 価格競争で起きる“イジメ”ビジネス〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160127-00000004-sasahi-soci
週刊朝日 2016年2月5日号より抜粋
1月13日、カレーチェーン「CoCo壱番屋」の冷凍ビーフカツ約4万枚が不正転売されていたことが発覚。異物混入のおそれがあるため廃棄された商品が、廃棄物処理業者「ダイコー」(愛知県稲沢市)によって横流しされ、愛知県内などのスーパーで一般客に売られていた。
なぜ、このようなことが起こるのか。農産物流通コンサルタントで『激安食品の落とし穴』の著書がある山本謙治氏は、こう指摘する。
「日本は食品の品質管理が厳しく、食品ロスが年間500万〜800万トンあります。異物が混入した商品は論外ですが、賞味期限間近の商品が格安スーパーなどに出回ることは日常的にあり、結果的にそれが通常商品の値下げ圧力にもつながっています」
たとえば、10年ほど前まで3パック120円前後で売られていた納豆は、今では60円を切ることも珍しくない。納豆業界関係者は、
「納豆は客寄せのために激安特売の対象になることが多い。スーパーなどの小売店から価格を下げろと言われると、断れない」
“イジメ”とも思えるビジネスも横行している。
「ある納豆メーカーは、大手スーパーの要請でPB(プライベートブランド)商品の製造を始めました。PB商品は単価が安くて利益が薄くても、大量の数の安定生産が見込めたからです。ですが、いざ製造を始めるとスーパーから『もっと価格を下げてほしい。できないなら、他のメーカーに変える』と言われた。取引をやめれば売り上げが大幅に下がり、工場もストップする。そのため泣く泣く値下げに応じたそうです。なかには倒産したメーカーもある」(納豆メーカー関係者)
納豆以外では、豆腐や卵、ソーセージなども価格競争に苦しんでいる。豆腐製造業の元関係者は、「カナダ産の大豆を国産と偽っていた」と話す。価格の低下が、品質の劣化を招いたのだ。前出の山本氏は言う。
「結局、小売店が業者に値下げ圧力をかけるのは消費者が安い商品を求めるから。企業努力にも限界があり、価格を下げれば品質も下がる。それを防ぐには、消費者が食べ物の最低価格を知り、極端に安い食品は『おかしい』と思わないといけない」