小林吉弥氏
自民、甘くはない参院選 命運を握るアベノミクス 小林吉弥氏
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20160104/plt1601041530004-n1.htm
2016.01.04 夕刊フジ
宿願の安全保障法制をやり遂げた安倍晋三政権だが、年明けからの政権運営は、夏の参院選を向こうにハードルが林立している。
1月4日召集の通常国会は、野党が手ぐすねを引く醜聞を抱えた閣僚の追及や、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)大筋合意への政府対応の批判などが待ち受けている。
特に後者は、農業に関わりの深い与野党議員の「TPP反対論」は強固で、審議紛糾も予想される。対応を誤れば、自民党を支持していた農業票が離反し、参院選への大きなリスクをはらむ。
国と沖縄県の対立が続くなか、米軍普天間飛行場の移設問題が争点となる宜野湾市長選(1月24日投開票)がある。自民党は沖縄の選挙で、名護市長選や県知事選、衆院選と連敗続きだ。宜野湾市長選を落とすと、6月の県議選も厳しくなり、「ドミノ的地崩れ」になった場合、参院選を直撃することが避けられない。一大決戦といえる。
2016年度予算の成立後は、安保法制に対する弁護士や学者らの集団違憲訴訟が全国各地で予想されている。眠っていた難題が目を覚ますことで、これまた参院選への逆風となる。
こうしたなか、最も高いハードルとなりそうなのが、政権の生命線「アベノミクス」の行方である。GDP(国内総生産)はじめ、各種経済指標は芳しくない。成長・消費・賃金など、庶民の恩恵への実感は乏しい。
安倍政権は「GDP600兆円」「新3本の矢」を打ち出したが、具体性を欠く。内需拡大のため、企業の法人実行税率を引き下げる一方で、設備投資の拡大や、最低賃金アップなど、異例の要請をしている。
しかし、筆者が会った財界人の1人は設備投資について、「景気の腰折れ懸念から、慎重にならざるを得ない。どうしても内部留保に目が向く」と、財界の空気を代弁していた。
自民、公明両党間で大モメを演じた消費税増税に伴う軽減税率対象品目の落着も、10%引き上げ時の痛税感を緩和し、消費全体を萎縮させない対策だが、すずめの涙程度にすぎない。
こうしたなか、FRB(米連邦準備制度理事会)が9年半余ぶりの利上げを決めた。新興国の成長ペースが落ち、わが国の輸出減は必至とみられる。企業業績の悪化がまた、国内消費を鈍らせる懸念がある。
「1強」安倍政権の主柱は経済に尽きる。参院選までに「アベノミクス」に暗雲がかかれば、選挙は厳しい。いずれにせよ、野党共闘は成立し、統一候補を立ててくるとみる。こうしたことから、自民党は予想外の苦戦を余儀なくされるのではと予測している。