我々は新たな世界秩序の形成を目の当たりにしている[スプートニク日本語]
2015年12月29日 23:05
世界は乱気流に突入した。我々の慣れ親しんだかつての世界秩序は、勢いを持って台頭してくる新たなそれに、押しやられている。現在の世界は、より不安定な、より動的な、より警戒すべきものに、またそれゆえに、より面白いものになる。高等経済学院世界経済国際政治学部長でロシア外交国防政策評議会の名誉会員であるセルゲイ・カラガノフ氏の言葉だ。
「行く年の色々な出来事は、戦後の国際関係システムが完全に役に立たなくなったことを示している。目の当たり、新たな世界秩序が形成されていっている。それがどのようなものになるか、予測は困難だ。しかし、いくつかの新たな傾向は指摘できる。第一に、中国の役割が大幅に高まった。来たるべき世界で、中国が、新たな超大国となり、米国の強力なライバルとなるチャンスは、大いにある。いま中国は、プレゼンスを旺盛に拡大している。東南アジアやアフリカだけではない。中央アジアでもだ。そこで中国の国益は、ロシアのそれと交差する。つい先ごろ、多くの専門家が、中央アジアで露中が衝突することは避けられない、との予測を立てたが、今のところ双方とも、衝突は回避できている。もし中国のシルクロード経済ベルトとユーラシア経済共同体の接合という理念が実現されたなら、ロシアと中国の戦略的同盟関係は、次なる世界秩序におけるひとつの極となり得る。このコンセプトがどれだけの実効性をもつのかは、時が来れば分かろう」
カラガノフ氏は、遅かれ早かれロシアと米国の関係は正常化する、と確信している。両大国の対立は全世界を緊張させているからだ。ただし、米国は世界における影響力を喪失する、とカラガノフ氏。
「この傾向が顕在化したのはここ3−4年だが、機はとうに熟していたのだ。2003年に米国の力は頂点を迎え、以後は著しく影響力を喪失している。アフガニスタン、イラク、リビアと、中近東でむやみに戦争に参加したためだ。これら紛争への軍事介入は、ほとんど全て、米国にとっては失敗に終わった。つまり、膨大な費用および外交的資源は、結果的に、どぶに捨てられたのだ。一方では、いまだに尾を引いている2008-2009年の世界経済危機で、西側の自由経済モデルの唯一無二性神話が崩壊した」
カラガノフ氏は欧州の動向に強い落胆を示している。氏の見るところ、欧州危機は実存的なものであり、出口は見えない。
「欧州危機の原因の一端は、非効率的かつ老朽化した社会システムにある。大々的な改革が必要だ。冷戦中に共産主義に代わるものとして打ち立てられた社会システムは、のち、経済における停滞現象となった。労働生産性は一貫して落ち続け、社会保障費は増大した。結果、欧州は、急速に成長するアジア諸国、特に中国に、経済的に敗北を喫するようになった。欧州の政治指導者たちは今、混乱している。使えるリソースはほぼ使いつくしてしまい、有権者たちの気分を理解することも止めてしまった。その結果、移民をめぐる危機的状況が起き、現代の欧州共同体のあらゆる重大問題が表面化してしまったのだ」
ロシアについては、カルガノフ氏は、ロシアにも欧州に劣らず大々的な改革が必要だ、と述べている。必要なのは21世紀の諸々の課題に即した改革だ。
「ロシアは今欧州が直面している困難を、意地悪く喜んでなどいてはならない。欧州の弱体化は、すなわち、ピョートル大帝以来ロシアが指針としてきた発展モデルが崩壊することを意味するのだ。しかし、色々な理由があって、ロシアでもまた、とうの昔に機が熟していた経済改革が、今もって実行されていない。もし我々がこのまま手をこまねいているなら、来たる21世紀の政治・経済・軍事戦略競争において、敗北は必至である。ただ、極東の集中的発展、それからアジア諸国への接近という方向性は、間違っていない。極東がロシアの将来における経済成長のエンジンとなる可能性は大である」
カラガノフ氏によれば、いま中東で起こっていることは、完全に想定内であった。
「歴史的、文化的、宗教的理由から、今のイスラムは、現代の挑戦に相応の回答を見つけられないでいる。だから地域のムスリム諸国は絶えず成長におくれを生じるのだ。長年かけて蓄積されていた潜在的緊張が、4年前、中東で噴出した。『アラブの春』だ。このプロセスがなお十年長引くこともあり得る。今年ロシア政府は、そのプロセスへの介入を試みた。シリア内戦への介入だ。それにはいくつかの理由がある。イスラム主義のテロリズムの芽を、ロシア領内に波及しないうちに、摘みとる狙い。西側との実り多き協力のための新たな土台を築く試み。国際社会におけるロシアの立場を強化する意図。これら課題がどの程度クリアされたのか、まだ評価する時期ではない。ロシアがずぶずぶとシリア紛争の泥沼にからめとられていく危険が現実的なものとして存在しているからだ」
グローバリゼーションの進行により、たとえ一カ国の問題であっても、しばしばその問題は隣国に及び、時には地域全体を、または全世界を巻き込んでいく。それでもカルガノフ氏は、未来を楽観視している。なぜなら氏は、次のように見ているからだ。「情報革命により、政治指導者たちは、たとえ権威主義的体制であっても、より多く世論の影響を受けるようになっている。世論は偉大な力だ」。