【ベイルート発】アフガン戦争と対IS戦争の激似 潤うのは・・・
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2015年12月5日 19:48 田中龍作ジャーナル
トルコのエルドアン大統領(左)とシリアのアサド大統領。IS台頭前は2人が利害を共にしていたことを人々は見抜いていた。=2013年6月、イスタンブール 写真:筆者=
トルコとISとの不適切な関係をロシアが暴露し波紋を広げている。
矛先をかわしたいのか。ロイター通信によればトルコは4日、兵力数百の陸上部隊をイラク領内に侵攻させた。トルコ軍スポークスマンは「クルド人武装勢力を訓練するため」と称している。
トルコ軍が兵を入れたのはイラク北部の都市バシカ。クルド人武装勢力が要衝モスルをめぐってISと戦う最前線だ。
パリのテロを受けて急展開するISとの戦争。「911テロ攻撃」に脊髄反射した米国とその同盟国が、アフガンに攻め込んだ戦争(2001年10月)とあまりに似ていることに驚く。
山の向こうでは米軍がアフガン国軍兵士を訓練していた。取材車は手前で止められた。2人はアフガン国軍兵士。=2007年、カブール郊外 写真:筆者=
首都カブールが陥落して間もなく筆者はアフガニスタンに入った。パキスタンからトライバルエリア(部族地帯)を抜けてカブールにたどり着いた。
部族地帯は雲を眼下に見下ろす深山幽谷だった。一応パキスタン領土でありながら、パキスタンの法治は及ばない。アンタッチャブルだ。
ここで態勢を立て直したタリバーンは、再び首都を陥れようとしている。部族地帯はゲリラ戦に必要不可欠な後背地にピッタリなのである。カブール陥落(2001年末)から10年余りを経ての反転攻勢だ。
戦争を長続きさせるには、アンタッチャブルな地域が必要だ。ISの手に落ちかけているクルド部族地帯でトルコが何かを企図していることだけは確かだ。
米軍に回収されるロシア製バズーカ砲や高射砲を兵営に集めたマスード派ムジャヒディーン。=2002年、カブール郊外 写真:筆者=
パキスタンを通してケシの精製物(麻薬)がアフガンから運び出され、代わりに兵器がアフガンに入った。
「ケシの精製物(麻薬)」を「石油」に置き換えれば、トルコとISの場合も構図は同じだ。
アフガン戦争終結後、米軍がロシアや中国製の武器を回収して、米国製の兵器をアフガン暫定政府に売りつけていた。アフガン暫定政府の国防部幹部から直接聞いた話だ。
米兵器メーカーへの支払いにはアフガン復興資金が充てられた。復興資金が米国に還流される仕組みだ。
米国はトルコに甘い汁を吸わせながら、対IS戦争を長引かせるつもりだ。最終的に一番潤うのはアフガン戦争同様、米国である。
〜終わり〜