年金積立金をギャンブル投資の安倍政権 3か月で10兆円消える
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151119-00000011-pseven-soci
女性セブン2015年12月3日号
「老後破産」「下流老人」という言葉がよくいわれるが、今、日本人の老後が崖っぷちに立たされている。埼玉学園大学経済学部教授の相沢幸悦さんはこう話す。
「老後のために積み立てられてきた年金資金が、この7〜9月のたった3か月の間に、10兆円ほど消えてしまったと計算できるのです」
それは一体、どういうことなのか──。私たちが毎月支払ってきた年金保険料は「年金積立金」としてプールされて、将来の年金の支払いに備えられている。
その積立金を管理しているのは「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」という政府機関だ。その額およそ140兆円。それらは現金のままではなく、国債や株で運用されている。
考え方は家計における老後の備えと同じだ。収入があるときにできるだけお金を貯金しておく。それでも、“たんす預金”ではもったいないので、少しでも増えるように、銀行預金したり、保険を買ったり、国債や株を買ったりして運用している。
「年金積立金の運用は“手堅く慎重に”が基本です。損をなるべく出さないようにしつつ、少しでもいいので利益を出していく。もし損が出たら、その分だけ将来国民が受け取れる年金が減ってしまうことになります」(相沢さん)
そこで、長い間、年金積立金の大半は最も安全な投資先のひとつである「日本国債」で運用されてきた。儲けが大きいわけではないが、絶対に減らすことはできないという観点から、運用先として選ばれてきた。
ところが昨年10月、安倍政権は今までの方針を転換。140兆円の年金積立金の25%で「日本株」を、25%で「外国株」を買うことにした。さらに、積立金の15%を「外国国債」に投資することに決めた。
国際的に信用のある日本国債に比べれば、外国国債は値動きが大きいので、値上りの期待が大きい一方で、値下がりするリスクが大きい。
この10月には「ジャンク債」と呼ばれる国際的に信用の低いハイリスク・ハイリターンな国債にも投資することが決まった。それには、財政危機にひんしているギリシャ国債も含まれている。高利回りが期待できる一方で、価値がゼロ(債務不履行)に陥る可能性もある。
日本株や海外株も同様で、大きなプラスになる可能性もあるが、極端な話、紙くずになってしまう危険性もある。安倍政権は年金をいわば“ギャンブル投資”にあててしまったのである。
「安倍政権は表向きは“少子高齢化の中で年金財政が逼迫しているので株式投資を増やし、運用益で年金積立金を増やす”と説明していましたが、実際の目的は年金を増やすことよりもむしろ“株価のつり上げ”にありました。140兆円の4分の1といえば35兆円。それだけ日本株を買えば、当然、株価を上げることができます。安倍政権は来年、とても重要な参院選を控えています。株価が上がれば、政府・自民党の経済政策『アベノミクス』は成功したと宣伝できて、選挙に有利です。だから、年金積立金を株式市場に投入して、株価を上げたかったのです」(相沢さん)
そうして、GPIFは私たちの年金を使って株を買い進めたが、今年8月下旬からの世界同時株安の影響で、株価が下落してしまった。
日経平均株価は2万1000円まで上がったが、一時、1万6000円まで下落。当然、年金積立金で買っていた株も値下がりしたはずで、あるシンクタンクが損益を試算したところ、約10兆円のマイナスだったというのだ。
大半を日本国債で運用していれば、これほど大きなマイナスにはならなかったはず。今回の10兆円という巨額の年金消失は、安倍政権のギャンブル投資の副作用ともいえる。
一方で、一時的な株価の変動で一喜一憂すべきでないという意見もある。実際に、アベノミクスによる株価の上昇で、GPIFは2013年度に約10兆円、2014年度に約15兆円の運用益を上げた。だが、今回はたった3か月で10兆円のマイナスである。相沢さんが続ける。
「今はまだ10兆円の含み損で済んでいますが、今の株高がいつまでも続くわけがない。2020年の東京五輪までもてばいいほうで、外国人投資家が売り逃げれば、もっと早く株価は下がるでしょう。リーマン・ショックの時、当時の運用比率では8兆円の損失で済みましたが、現在の比率ではその3倍の26兆円のマイナスになるといわれています」
GPIFによる正式な発表は11月末に行われる予定だが、発表と同時に世間に衝撃が走ることは間違いない。
「手堅い信用を望む国民も少なくないはずです。それなのに安倍政権は国民に対し、“極端に言えば将来、みなさんの年金が3割減ることもありますよ”ときちんと説明をせず、国民の合意が得られないまま、勝手に運用方法を変えてしまった。これは大問題だと思います」(相沢さん)