辺野古三地区への振興費
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2015年10月26日 在野のアナリスト
フジ・産経の世論調査で支持率が微減したことを、菅官房長官に質問した産経の記者がいますが「一喜一憂しない」と応じています。日経がとった世論調査ではまったく逆の結果でもあるので、それこそ新聞各社に一喜一憂するのは馬鹿らしい、ということでもあります。というより、産経が自らの世論調査だけを指して質問することこそ馬鹿馬鹿しい、となるのでしょう。
しかも相変わらず政権支持の理由は首相の『人柄』『指導力』がトップ項目ですが、個別政策はすべて反対が上回る。数字どおりに解釈するなら、「間違った指導力で間違った政治をしている」となります。そもそもこの世論調査、ミスリードが多い。例えば野党の選挙協力に対して「各党には政策にズレがある。選挙協力は望ましいか?」や、消費税の10%増税は規定路線として、軽減税率のことを聞いていたり、増税停止や延期はハナから質問項目にすら入れていない。特にTPPでは「関税撤廃」を示唆した上で、「TPPは日本経済の活性化に役立つか?」など、賛成が増えるような聞き方をするなど、中立性とも乖離します。そんな世論調査を成果の如く、自慢げに質問されても、一髪千鈞をひくようなもので同意を得るのはむずかしいのでしょう。
安倍政権が辺野古移設に関して、名護市辺野古の三地区に振興費を直接渡す、ということを地元代表に伝えました。行政自治が認められたわけでもない、ただの地区に直接支出するなど、異例で異常です。政令指定都市のように、行政区であればまだしも、行政権はないのですから振興費を渡されても、結局は国かその出先機関が肩代わりして公共工事をする以外にありません。地方分断どころか、これは地方自治にも大きな禍根を残す、異常事態ともなります。
例えば、やっと遮水壁が設立された福島原発ですが、未だに除染廃棄物の中間貯蔵先が決まりません。仮に、同意する一部の地域の人間にお金を渡す、などとして貯蔵先を決めてしまうことも、この手法では可能となります。基地にしろ、除染廃棄物にしろ、周りに迷惑をかけないなら小さな区画の枠内で収めることも可能でしょう。しかしそうでない以上、より広汎に意見を求める必要があり、決して一部の意見だけが優先されてよいはずもない。これは民主主義の否定にもつながり、より僅かな意見だけで施策をすすめる、という最悪の選択でもあります。
為政者のあるべき姿を述べる言葉に『一張一弛』があります。弓の弦を使うときに張り、使わないときは弛める。そうした厳格さと融和をさした言葉ですが、三地区への振興費は『緊張必至』の状況を生みます。むしろ余計に地元を混乱させ、辺野古移設を遠ざけることでしょう。何より、行政不服審査に関して、違法だという声が高まっている。安倍政権はやること、為すこと、異例で異常。そんな評価が高まりつつあり、その一つに今回も数えられることでしょう。
もう一つ四文字熟語をあげると、『一曲一直』というものがあります。ぼうふらの動きに喩えられますが、物事は曲がったり、真っ直ぐになったりしながら進む。しかし安倍政権は曲がりっ放しです。誰に入れ知恵されたのか、これまで使ったことのない手を用いて、自身を正当化することに躍起で、それが後世にどう評価されるか? ということに思い至らない。こういう法律を捻じ曲げてつかうことを『一知半解』とも言います。なまじおかしな知識があっても、半分の理解しかしていないので、学者には総スカンを食らいますし、国民に説明することもままなりません。
安倍政権はまさに一髪千鈞をひく状況を、至るところに生み出している、とさえいえます。世論調査でも安倍ノミクスの評価はガタ落ち、安保法制でさえ理解されていない。『一喜一憂』どころか、『一殺多生』という言葉もありますが、安倍政権の施策が『多殺一生』(わずかな者だけ喜ばし、多くは排除する)である以上、『一葉の秋』を感じ始めてきた木枯らし一号、となるのかもしれませんね。