若林氏は、外国為替相場について、「私はファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)というのは関係ないと思っている」とのことだから、経済論理の話は意味がないかもしれないが...
若林氏は、「世界的にはQEの資産価格押し上げが限界に達し、リーマンショックから始まったデフレが深刻化すると予想。米国は「大デフレ」になり、」とする一方、「日本は基本的に長期デフレを脱却している」という見方を示している。
12年秋までの超円高は、ファンダメンタルズや経済論理というよりリーマンショックに端を発する「ユーロ圏銀行危機」による円への逃避が大きな要因であり、12年秋から現在に続く円安傾向は、「ユーロ圏銀行危機」解消(ECBの南欧諸国を含む国債の無制限買い取り表明)による巻き戻しと円安を支えると考えられる日銀量的緩和策が合体することで持続しているもので、どちらもファンダメンタルズに即しているとは言えない。
また、コモディティ価格の下落や中国経済不調による工業製品価格の低迷が世界的なディスインフレ状況をもたらしていると思っているが、それがデフレましてや「大デフレ」になるとは考えていない。
外国為替相場は、短期はともかく、中長期的には輸出品価格を中心としたインフレ率の差で規定されるものであり、米国経済が「大デフレ」になれば、円ドルレートは円安傾向に振れることになる。
若林氏自身も、「ドルが2008年から上がり続けているのは「日本のデフレ円高と同じ」米国がデフレだから」と説明し、FRBの金利引き上げ政策を批判している。
1ドル=100円割れにならないとは言わないが、米国が「大デフレ」になり日本は長期デフレを脱却という構図なら、購買力平価理論を考えればわかるように、円ドルレートは円安になると判断するほうが理に適っている。
付け加えると、ここまでくると悪いこととは言い切れないが、1ドル=100円割れになると、日本はデフレに戻る可能性が高い。
最後に、若林氏は、「米国はなりふりかまわずドル安だろう」と予測しているが、ドル安になってしまうことは仕方がないとしても、国際金融国家アメリカが、利益に反する意図的ななりふり構わずのドル安政策に走ることはない。