東海東京調査センターの中井裕幸チーフグローバルストラテジスト(撮影:尾形文繁)
乱高下する日経平均株価、今後を見通す3つのポイント
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150930-00086510-shikiho-nb
会社四季報オンライン 2015/9/30 22:11 島 大輔
8月中旬以降、先行きを見通すのが難しい不安定な状況が続いている日経平均株価。10月以降は株価に影響を及ぼしそうな重要なイベントが控えており、中旬からは国内企業の決算発表も本格化する。東海東京調査センターの中井裕幸チーフグローバルストラテジストに、今後の見通しを聞いた。
――全体相場の乱高下が続いています。
日経平均株価の8月から9月にかけての調整は予想していたものの、海外ファンドの利益確定売りや損失穴埋めが先物を通じて一気に出たことにより、想定以上に下げた。しかし、日本市場自体にそれほどの悪材料があるわけではない。
過去を振り返ると、世界的な株価の急落には2通りある。1つは、1987年10月のブラックマンデー型で、これは値幅の調整を終えれば回復する。もう1つは、金融危機へと発展してベアマーケットが長期間続く2008年のリーマン・ショック型だ。今回の急落は、主要国の金融政策のゆがみが不安心理を増幅させてリスク回避につながったという点で、ブラックマンデー型だと考えている。
――全体相場が上昇トレンドを取り戻すには何が必要でしょうか?
ポイントとなるのは、中国の景気対策、米国の利上げ時期とペース、そして、日本の金融政策だ。
まず、中国では10月に、経済5カ年計画を討議する五中全会(中国共産党中央委員会第5回全体会議)がある。ここで財政出動を含めた景気対策を決定することが、世界的な景気減速を強めないためには大切だ。底入れを示唆する中国の経済指標が出ることも待たれる。
米国の利上げについては、ジャネット・イエレンFRB議長は年内の開始を示唆しており、株式市場もその影響をある程度は織り込んでいる。あとは、緩やかなペースで利上げすることを明示してくれればいい。利上げを来年以降に先延ばしすれば米国経済がバブル化する危険性もあるし、利上げ時期が取りざたされるのは米国経済が強いからでもある。
そして、最後のポイントは日本における追加緩和の有無だ。原油価格低下の影響などにより、7―9月の消費者物価指数(CPI)が再びマイナスになるリスクが浮上している。黒田東彦日銀総裁の政策はインフレ期待に働きかける政策であり、その期待がなくなってしまえば元の木阿弥となってしまう。また、9月25日には安倍晋三首相と黒田総裁の会談が行われている。過去の安倍・黒田会見の後には、マーケットの転機となることが多かった。
10月30日に予定されている日銀の展望レポート発表のタイミングで、追加での金融緩和が発表される可能性が浮上している。黒田総裁はサプライズを好むため、10月6〜7日に予定される日銀政策決定会合後のタイミングで発表する可能性も捨てきれない。ただ、10月後半から本格化する国内企業の決算発表では、業績上振れを見込む強気なアナリスト予想に対して、計画を据え置く会社が多くなるかもしれない。このあたりの株式市場への影響を見極めつつという意味で、10月末のタイミングのほうが適しているとみている。
――日銀の追加緩和があるとすれば、どのような内容になると考えられますか?
地方債や政府関係機関債の新規購入などが想定されるが、緩和をやり続けるという強い姿勢をはっきりと示すことがカギとなってくるだろう。
■ 今後の注目セクターは?
――そのような背景を踏まえて、今後の注目セクターと日経平均株価の見通しは?
内需関連の中で、割高になっていない銘柄に注目だ。食品やインバウンド関連にはすでに買われている銘柄が多いが、たとえば建設関連では割安な銘柄も見られる。また、マイナンバー制度の導入で需要増が見込まれるソフトウエア関連にも、出遅れている銘柄がある。
ほかには、物言う株主の影響力で、自社株買いなど株主還元が期待できそうな銘柄もある。また、中長期の投資と割り切って、大型優良株で割安水準となっている銘柄を探す方策もある。ESG(環境・社会・企業統治)投資も、公的年金資金などの運用テーマとなれば中長期でクローズアップされてくるはずだ。
米国経済は好調さを維持しており、中国もハードランディングにはならないと見ている。また、国内企業の増益基調は崩れておらず、日本株優位という基本軸に変更はない。今後の見通しは、従来予想よりも発射台が下がってしまったものの、年末に1万9000円から2万円、年度末には2万1000円まで上昇するとみている。
目先の不安定な状況の潮目が変わるかどうかの分水嶺として、今後1カ月の動向が非常に大切となってくる。
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
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