撮影ヘリは救助の邪魔…決壊映像で視聴率稼ぎに走ったTV局
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/163871
2015年9月14日 日刊ゲンダイ
10日、視聴者をくぎ付けにした茨城・鬼怒川の堤防が決壊した記録的豪雨報道。
各局とも、瓦屋根の上で犬を抱いて救出を待つ老夫婦と、家の中から手を振る家族、そして電柱につかまって救助を待つ男性を映し出し続けた。そして自衛隊のヘリが住民を見つけ、無事に救助できるかに集中、「自衛隊のヘリが今、来ました」などと救助活動の実況中継を行った。
しかし、多くの視聴者はそれよりもどんな被害状況、救助活動態勢になっているかを具体的に知りたかったはずだ。
「各局とも濁流にのみ込まれそうな住民を映し出すことで、視聴率アップを狙っていたとしか思えない報道でした。危険なシーンを映して煽るだけ煽ったのです。東日本大震災の時は横並び報道が後に批判され、国や各自治体の災害対策に関して報道する必要性が叫ばれましたが、その教訓がまったく生かされていなかった。それと、今回は撮影のためにヘリコプターをガンガン飛ばし、風圧が濁流を揺らしていましたが、阪神大震災のときにヘリを飛ばすと音や風が救助活動の邪魔になると指摘されていた。できればドローンを飛ばすべきで、何の工夫もなかった」(放送関係者)
11日は宮城で大雨が続いたが、なぜか豪雨の爪痕、悲惨な状況というやはり横並びの前日の検証番組ばかり。たとえば朝の番組では、店内が水浸しで床に濡れた又吉直樹の「火花」が散乱する書店を映すなど興味本位の映像があふれた。さらには避難所で被災した人に「どうですか」とマイクを向ける相変わらずの無神経さ。テレビの質はますます劣化しているとしか思えない。
放送ジャーナリストの小田桐誠氏がこういう。
「とにかくその場だけの報道で呆れました。あの決壊現場だけを延々と映しているので、全体の状況はまったくわからないし、市や国がどう動いているかもまったくわからなかった。成り行き任せの報道としか思えなかったし、テレビの怠慢だと思いました」
こういう場合、いち早く駆けつけるフジテレビの安藤優子も今回は現場に向かわず。テレビ局のあまりのやる気のなさに呆れるしかない。