黒田日銀総裁のNY講演
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52740861.html
2015年08月30日 在野のアナリスト
WTI原油先物価格が大きく切り返しています。売り方が株式の反発をみて、一旦利益確定の買い戻しをいれたものとみられますが、株式市場でも信用売りが溜まっていることを、反発の理由とするものがありますが、需給はそう容易くない。9月末まで、また12月末までに今回でた損失を、どう穴埋めするかをヘッジファンドなどは考えています。儲かっている市場から売る、これ以上は上がりそうにない、間延びした市場から売る、が鉄則になります。特に日本は外需が崩れた途端、企業業績もジリ貧になる脆弱さであり、株価の基本である企業業績がどう推移するか? 正直、市場期待が高すぎるだけに、それに沿うだけの結果を達成するのは、相当に難しくなったとみています。そのとき売り方が力をもつのであり、3月以降ずっと高水準で先物買いを溜めこみ続けた米系のように、大きなポジションとその整理が、今後も波乱要因になることが確実です。
黒田日銀総裁が、NYで講演しました。中国経済について「成長率は減速するが来年は6〜7%は維持」と述べていますが、これが見かけの発表ベースのことなら、とんだお人好しです。政策対応に余裕がある点を、その理由としますが、日本が異次元の金融緩和という手を打っておいてマイナス成長に陥るように、政策が必ずしも効果がでるとは限らない。むしろリーマンショック後に打った大規模な財政出動が、過剰な設備投資につながり、今はその整理すらままならない状況であり、景気対策の手段が、先進国のどこよりも困難という問題に答えていません。
不動産にしろ、株式市場にしろ、緩和すればバブル化し、退治しようと動けば暴落する。国民の経済知識が乏しいまま、資本主義社会に放り込まれた結果、社会主義時代の国家が何とかしてくれる、という甘い判断のまま投資してしまう。その危険性の中で、政策を打たなければなりません。そんな中国に、財政上の理由だけで期待するのは、政策当局者としても落第です。
また黒田氏は「日本は完全雇用状態」と述べましたが、大きな誤りです。経済指標で示されるのは、労働人口が急減していること。これは、このまま何もしなければ日本の成長率も急減する、ということです。労働の効率化や、労働に頼らない仕組みで成長する以外、日本は減退する。その裏側で、雇用の方が緩やかに落ちているため、数字的には改善しているように見えます。もし黒田氏が、この仕組みを知っていてこの講演をしたとすれば、外国人投資家を騙す目的だったのでしょう。むしろ、知っていてあえてウソをついた、確信犯なのかもしれません。
物価上昇率2%への目標達成に自信を示したのも、確信犯としてのウソなのでしょう。中国ではよく経済指標は信用できない、と語られますし、事実その通りの結果です。しかしその指標を都合よく解釈し、他人を騙すようなことをする人間が、日本の金融政策の責任者、という点にこの国の重症度も感じます。それこそ安倍ノミクスも、黒田バズーカも期待に働きかける、つまり期待を生みだすためにウソをつかなければならない、といった宿命のようなものを背負っているのかもしれません。期待という、将来への明るい展望をばらまいた挙句、その達成が困難となったとき、むしろ今すでにその状態に近づきつつありますが、日本への期待が失望に変わったときの外国人投資家の動きがもう始まっているのだとすれば、高い信用売りという材料も、あながち反発期待へと結びつかないことをキモに命じておく必要があるのでしょうね。