ツキの落ちた安倍政権
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52729593.html
2015年08月12日 在野のアナリスト
中国が再び人民元を1.6%切り下げました。しかしそれと同時に、国有銀が人民銀行の委託でドル売り介入を行っています。基準値から2%前後の余裕をみているので、急激な動きに対処するため、ということもあるでしょうが、もう一つの見方として外貨準備を減らしたかったのではないか。人民銀の手元資金を厚くし、株価対策などで劣化した国有銀の自己資本を、人民銀から補填しようとの意図とも考えられます。同時に発表された各種経済指標は良好な数字もありますが、信憑性がないのは言うまでもありません。中国の人民元さえ、信用を失墜させつつあります。
アジア通貨危機の再現も懸念されていますが、アジア各国も通貨安に見舞われる中、円まで125円台をつける場面がありました。円の弱さを如実に示しますが、株式も大きく下落しています。原因は8月のマイナーSQに向け、コール市場で21000円の商いが活発化していたため、高いポジションでやり合っていたものの買い方が負けたことで、調整を大きくしたのでしょう。中国不安で、年後半に業績の急回復、というシナリオにも黄色信号が灯り、市場のメインシナリオが崩れてくると、さらに大きな調整にもつながります。中国の動向にはしばらく注視せざるを得ません。安倍政権では株価対策に躍起ですが、ここにきて中国が最大の懸念に浮上してきました。
菅官房長官、翁長沖縄県知事の会談が行われようとする矢先、沖縄沖の海上で、米軍ヘリが墜落しました。重要なのは自衛隊員も負傷している点です。昨日、国会で共産党が暴露した防衛省による、日米ガイドライン及び安保法制の改定にともなう対応、という話が真実だとすれば、この米軍ヘリに自衛隊員が搭乗し、合同訓練を実施していた可能性があります。これが個別的自衛権に基づく、自衛隊としての訓練に、指導員として米軍が立ち会う、という形なら問題はなかったのでしょう。しかし米軍の訓練に自衛隊員が搭乗し、訓練していたとなると、微妙な時期だけに集団的自衛権との兼ね合いから、国会で大きな問題になることも想定されます。
さらに沖縄では、米軍の危険が再び意識され、菅氏と翁長氏の会談にも影響します。普天間の危険性を訴えても、辺野古とて沖縄のリスクが下がるわけではありません。住宅地からは離れますが、沖縄の負担が減るでもなし、航空機が沖縄県内をとぶことに変わりがないからです。
ツキがなくなった安倍政権、まさに最近はそんな言葉がぴったりです。安倍首相は山口県入りし、節目では山口県出身の政治家が首相だった、として総裁選にも意欲をみせました。しかし自民内では、いつ病気退陣するか? が注目され、安倍氏を追いこんで恨みを買うようりは、総裁を続けさせ、来年の参院選直前で交代させ、新しい首相で参院選を戦う、がベストシナリオとも語られます。1年もあると、ここで新政権を誕生させても、支持率が下落している恐れもある。安倍ノミクスも限界で、これから景気がさらに下方へと推移していくと、ますます政権への風当たりが強まる。支持率下落と相反するように、安倍首相続投、の声が日増しに高まるのは、安倍氏を最期まで使い倒して退陣させたいから、そんなシナリオも透けるのです。
安倍首相が国民の声を理解していないことは、広島豪雨の際でも、一旦は官邸に戻ってもすぐ別荘にて休暇をつづけようとした点などに現れます。国民が苦しんでいても、気にならない。今回も、日航機墜落事故から30年、政府から何らかのコメントが出るかと思いきや、もしかしたら出ているのかもしれませんが、未だに報道はありません。それは首相も、官房長官も官邸に不在なのですから機能するはずもないのですが、多大な被害をだした事故の、節目の年に首相であることすら気にならないのかもしれません。自民の安倍政権退陣シナリオを崩すのは、安倍氏が突然、病気辞任してしまうことです。安倍氏は自らの態度、行動、言動でより自身を追いつめていく、ツキを落とすことを自らする。病気が悪化する原因は、他のことでは無責任を貫いても、ここだけは自己責任、という点で、自民党内をやきもきさせているのでしょうね。