「マウス手交ミスは考えられないか」(EJ第4094号)
http://electronic-journal.seesaa.net/article/423870066.html
2015年08月10日 Electronic Journal
若山照彦山梨大学教授自身が自らマウスを交配させ、その子マ
ウス(生後1週間)から、小保方氏のプロトコルにしたがって作
製に成功したSTAP幹細胞(「FLS─T1/2」)の遺伝子
解析の結果が、アクロシンGFPを持つES細胞(FES1)の
遺伝子と一致したということは何を意味するのでしょうか。
「FLS─T1/2」の作製は、すべてのプロセスを若山教授
自身が操作しているので、小保方氏がES細胞を混入させること
は不可能です。それでもSTAP幹細胞が作製できているという
ことは、「STAP細胞はある」ということになります。
それでもその解析結果が、ES細胞の遺伝子と一致したという
ことは、若山教授のマウスの手交ミスしか考えられないことにな
ります。かつてCDB時代の若山研では、アクロシンGFPが組
み込まれたマウスを飼育していたのです。このマウスは、大阪大
学の岡部勝元教授が遺伝子導入技術で作製した黒マウスで、岡部
研から提供されたものです。
若山教授が岡部研提供の黒マウスと市販の白マウスを交配して
赤ちゃんマウスをつくり、それからSTAP幹細胞を作製したと
すると、その遺伝子は同様の方法で作製したES細胞(FES1
/大田浩研究員作製)と遺伝子はほとんど一致するはずです。そ
れは当たり前のことです。
調査委員会は、「FLS─T1/2」については遺伝子解析を
しているにもかかわらず、本音では議論したくないのです。した
がって、「FLS─T1/2」は論文に関係がないとしてスルー
しています。都合が悪くなると、論文とは違う、関係ないとして
逃げるのです。調査委員会の記者会見でも、ある記者がこの点を
鋭く衝いた迫真のやり取りがあるので、その部分を再現します。
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記者:たとえば、FES1(大田浩研究員作製のES細胞)から
キメラマウスを作って、そこからSTAP細胞を作れば、
ここまで一致するということはないのか。
桂 :ええと、ES細胞からキメラマウスを作り、そこからST
AP細胞を作れば、かなり似たものができると思う。
記者:ということは、ここまで極めて遺伝子的特徴が一致するこ
とは、ありえなくはないということか。
桂 :(困惑して笑いつつ)米川先生(※1)どうですか。マウ
スの専門家としてのご意見は?
米川:遺伝学の立場からすれば、そういった可能性はあまりない
と思う。完全にないとはいえない。これは科学の世界では
何点何%という限られた事実でしか判定できないので、一
般の方がいわれるように、たとえば、99・9%、0コン
マ01%あるから、違うんじゃないかといわれても、そう
いったことは、普通科学の常識としてありません。
記者:まったく違う場合に極めて同じになることは確率的にはあ
り得ないが、今のようなやり方でやれば、極めて似てしま
うことはありうるということでいいか。
桂 :ES細胞とESを作ったといわれるマウスとがかなり違っ
た点がいっぱいあることはわかっている。
記者:ということは、そういった方法で作れば、似ているかもし
れないが、そうした可能性はほぼありえないということで
いいのか。
桂 :(戸惑いつつ)伊藤先生(※2)、いかがですか。
伊藤:それはSTAP細胞が存在しても話として成り立つのでは
ないかということか。もし仮にそうだったとしても、そん
な面倒くさいことをしなくても、そのままやれば個体を発
生させることはできるわけだが、それはできないことでは
ないが、論文記載の方法とは全く違うということはいえる
と思う。
──研究論文調査委員会記者会見より
※1/米川博通氏/東京都医学総合研究所シニア研究員
※2/伊藤武彦/国立大学法人東北大学教授
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記者は、ES細胞からキメラマウスを作り、そのキメラマウス
と他のマウスを交配させて子マウスをつくり、その子マウスから
STAP細胞を作った場合、元のES細胞の遺伝子とほぼ一致す
るのではないかと質問したのです。
桂委員長は思わず「かなり似たものができる」と答えてしまい
「しまった」と思ったのではないでしょうか。桂委員長は若山氏
と小保方氏を聴取しているので、ある程度の事情はわかっており
岡部研由来のマウスのことも知っているはずです。
しかし、これに明確に答えると、調査委員会の結論が覆される
ので、米川、伊藤両氏に意見を求め、論点をぼかして逃げたので
す。伊藤氏も論文のやり方とは違うとはいうものの、それがあり
うることを認めています。
当時CDB時代の若山研究室には、岡部研の黒マウスや、ST
AP細胞から作製したキメラマウスなどが多く飼育されていたの
です。もちろんマウスの管理はきちんとやっていたのでしょうが
マウスを交配するとき、人間のやることですから、間違ってしま
う可能性は十分あると思います。
しかし、STAP細胞に疑惑が生じたとき、疑惑の矛先はすべ
て小保方氏に向けられ、若山教授サイドのマウスの手交ミスを疑
う人は誰もいなかったのです。メディアも若山教授を情報源にし
ていたせいか、一貫して若山教授サイドの情報は正しいとして、
すべて小保方氏サイドを疑っています。小保方氏サイドに立って
いたのは、笹井芳樹氏と丹羽仁史氏の2人だけです。それはあま
りにも異常な現象であり、そのプレッシャーからか、日本にとっ
て貴重な再生医療の権威である笹井芳樹氏を自殺に追いやってし
まったのです。本当に痛ましい話です。
果して小保方氏に桂調査委員会の結論が強く示唆するES細胞
の混入が本当に可能だったのでしょうか。明日のEJで引き続き
検証していくつもりです。 ── [STAP細胞事件/067]
≪画像および関連情報≫
●STAP細胞は何だったのか/粥川準二氏
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STAP細胞問題とはいったい何だったのか?
「事件」ともいえるこの問題にはあまりにも多くの側面があ
り、一言で表現するのは不可能である。しかしながら、現時
点で一つはっきりしていることは、小保方晴子氏だけでなく
理化学研究所(以下、理研)幹部を含む当事者たちは、科学
という営みの前提であるはずの「信頼」を内部から崩壊させ
たということであろう。
この問題のおかげで2014年は、最初から最後までST
AP細胞に振り回された年だった。その余波は2015年の
いまも続いている。昨年1月末、このSTAP細胞という新
しい「万能細胞」の作成成功が報じられたとき、筆者がまず
気になったのは、胎盤にも分化できることなど、iPS細胞
とは性質が異なるといわれているこの細胞を研究したり、臨
床応用したりすることには、何からの生命倫理的な問題──
より適切にはELSI(倫理・法律・社会的問題。「エルシ
ー」と発音)──はないのか、ということであった。それを
考えるために原著論文を手に入れ、解説記事なども参照しつ
つ、辞書を引きながら少しずつ読み始めていたところ、ネッ
ト上で研究不正の疑惑が流れ始め、それらと原著論文を照ら
し合わせるのがやっとという状態になってしまい、ELSI
どころではなくなってしまった。 http://huff.to/1IpsASK
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