トヨタ・豊田社長(左)と日産・ゴーン社長/(C)日刊ゲンダイ
トヨタ、日産…過去最高益に沸く自動車業界の“アキレス腱”
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/162473
2015年8月7日 日刊ゲンダイ
自動車各社が好決算に沸いている。トヨタ自動車の第1四半期(4~6月)は売上高6兆9876億円で、純利益は過去最高の6463億円だ。
「年間の純利益予想は2兆2500億円ととてつもない。白紙撤回される前の新国立競技場(2520億円)が9つもつくれる規模です。売上高予想は約27兆円と、ギリシャのGDP25兆円より大きい」(市場関係者)
日産自動車や富士重工も過去最高の最終利益だった。輸出中心の自動車業界はアベノミクスの恩恵をたっぷり受けている。ドル円相場は1年前(2014年4~6月)に比べ、20円近く円安に振れ、トヨタの為替差益は1750億円にのぼった。大手7社でトータル約3400億円の差益だ。
「円安メリットを最も享受したのは自動車業界です。ただ、これが裏目に出かねません。株式市場は、円安効果が剥げ落ちる危機感を抱き始めています」(株式評論家の倉多慎之助氏)
トヨタ株の動きは冴えない。過去最高益を発表した翌日(5日)にもかかわらず、終値は前日比191円安(マイナス2・35%)の7930円だった。
「材料出尽くしとみることはできますが、自動車業界に逆風が吹き始めたのも確かです。ひとつは、TPP合意の先延ばしで、自動車部品など関連会社の業績拡大が期待薄となったこと。もうひとつは、安倍政権の支持率低下が大きく影響しています」(証券アナリスト)
アベノミクスは円安政策を進めることで、輸出企業の業績をアップさせ、株高をつくり出した。自動車業界の空前の好決算はアベノミクス効果が大きかったのだ。
「市場は、不支持率がどんどん高まっている安倍政権の崩壊を感じ始めています。政権が崩壊したら、アベノミクス効果で株価がハネ上がった自動車株は真っ先に『売り』のターゲットになるでしょう。だから、株価の上値が重いのです」(倉多慎之助氏)
7月の国内新車販売台数は前年同月比で7・6%減と7カ月連続でマイナスを記録した。消費税増税や軽自動車税増税の影響があるにしても、国内の売れ行きはパッとしないままだ。最高益に浮かれていると、足をすくわれかねない。