買い物のケタが違う(C)日刊ゲンダイ
中国人観光客が“爆買い” 意外な「メード・イン・ジャパン」
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2015年8月6日 日刊ゲンダイ
「彼女とするより右手がいい」という草食時代だから、コンドームが売れない。ところが、大手の不二ラテックスは先月、栃木工場を強化。「来年度には、14年度比で3割増産する」と発表したことから、株価はきのう、取引時間中に、年初来安値の2.4倍までハネて424円に上昇。その流れは同業他社に波及し、オカモトと相模ゴムもきのう、そろって年初来高値を更新している。苦しいはずの業界がなぜ?
「中国人がコンドームを爆買いしているのです。世界最薄の相模ゴム製は0.01ミリで、他社も0.02ミリととにかく薄い。それでいて破れにくく、ゼリーや香りなどのプラスアルファの機能もある。そこに目をつけた中国人がまとめ買いしているのです」(兜町関係者)
中国人の爆買いというと、電気炊飯器、温水便座、空気清浄器が“三種の神器”だったが、今はあらゆる商品がターゲットになっている。中でも人気なのが薬だ。銀座で買い物していた北京から来た観光客が言う。
「中国のサイト捜狐に『日本で買いたい神薬12』が紹介されているのを見て、私も欲しくなった。北京の冬は寒いから、指先が切れるのよ。小林製薬の液体ばんそうこう『サカムケア』は、傷口が水分から保護されて水仕事が楽になるから300個買ったわ。参天製薬の目薬『サンテ ボーティエ』は、瓶やバラの香りがよくて200個ね。ほかにお薦めはない? 中国ですでに人気のモノではなくて、周りが持っていないモノを買って帰ると自慢できるから何でも買うわよ」
記者に逆質問するほどで、とにかく買い物意欲が旺盛だ。都内のあるドラッグストアでは、中国人2人組がトラックで乗り付けて買い漁る。スタッフに欲しい薬のメモを見せ、「『車に積めるだけくれ』というので、この連中は店長決済です」(スタッフ)という。
■免税制度の拡大も意欲に火
そんな爆買いで、「サカムケア」の4〜6月期の売上高は前年同期比5倍超と景気がいい。
「昨年9月までは、免税対象が家電や装飾品、靴、カバンなどに限られていましたが、翌10月からは食料品や飲料、化粧品などを含めすべての商品が対象になっています。免税制度の拡大が、中国人の爆買い意欲に火をつけたのです。免税になるのは、1人1日1店舗当たり『5000円超、50万円未満』の買い物で、単価が安いものはおのずと爆買いされやすい。生理用ナプキンや紙オムツ、マスク、カイロ、粉ミルク、お菓子の詰め合わせ、シャンプー、化粧品、白髪染め、サングラス、離乳食、調味料なども人気です」(流通関係者)
中国人にとっては、現地価格は日本の2倍以上するから、免税品の爆買いが得なのだ。経済評論家の荻原博子氏が言う。
「訪日外国人全体の買い物額の平均は8万円弱ですが、中国人に限ると、約18万円に上ります。安倍政権によって対中関係が微妙で、上海市場の動向も気になりますが、それでもこの爆買いぶりはすごい。中国人は新幹線や飛行機で国内を移動するので、爆買いは地方に波及。都市部の家電量販店や百貨店だけでなく、地方の小売店なども免税販売に乗り出せば、爆買い需要を取り込めます。日本人にとって“こんなもの”でも、中国人はこぞって買いますから、とにかく何でも売り込めば売り上げアップのチャンスです」
免税対象がすべてになった以上、免税販売の資格がなければ、取って売るくらいの意気込みが必要だ。