20代女性や男性にも 立ち仕事でもなる下肢静脈瘤〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150623-00000000-sasahi-hlth
週刊朝日 2015年6月26日号より抜粋
静脈の「弁」が壊れることで血管内を血液が逆流し、足の血管がこぶのようにふくらむ「下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)」。2014年にレーザーと高周波、二つの新たな治療法が保険適用となり、これらの治療で術後の痛みや皮下出血が大幅に軽減された。
東京都在住の元教諭、田崎和雄さん(仮名・75歳)は、40代のころから「足がだるい」「少し歩くとすぐに疲れる」「歩きにくい」などの症状があった。太ももに浮き出ている血管のこぶが原因とは知っていたが、受診は気が進まなかった。しかし症状が一向に改善しないため、14年5月に思い切って、下肢静脈瘤の治療を専門にしている四谷・血管クリニックを訪れた。
下肢静脈瘤とは、血液の逆流を防ぐ血管の「弁」が壊れることで、逆流した血液が吹きだまりのようになり、血管がこぶ状にふくらむ病気だ。女性に多く、とくに立ち仕事をする人、妊娠・出産経験者、40代以降の中高年に多い特徴がある。
妊娠中はホルモンの影響で血管が広がりやすくなること、血流量が増えること、大きくなった子宮で静脈が圧迫されることなどが要因となり、妊娠や出産を機に20〜30代で発症することも珍しくない。ほかにも、遺伝的な要因、老化などで起こることもある。また最近では男性で、とくに脂質異常症や高血圧など生活習慣病のある人の受診が増えていると、同クリニック院長の保坂純郎医師は指摘する。
「まだ因果関係は解明されていませんが、動脈がダメージを受けていれば静脈ももろくなっていると考えられ、それが弁の破壊につながる可能性は否定できません。当院では、静脈瘤の患者さんが来院された場合には動脈の異常の有無も確認し、他の病気の可能性を排除した上で下肢静脈瘤と診断します」(保坂医師)
診察の結果、田崎さんの動脈の状態は良好で、持病もなかった。教師という立ち仕事で、足への負担を長年蓄積したことによる下肢静脈瘤と診断した。
下肢静脈瘤の自覚症状は、血管が浮き出る、足がむくむ、重い、だるい、かゆい、ほてるなどで、進行すると湿疹や黒ずみ、潰瘍などの皮膚症状が起こる。治療法は、血管の内側を焼いて血管を閉じる「レーザー治療」と「高周波治療」、弁の壊れた血管を引き抜く「ストリッピング手術」、血管をしばる「高位結紮(けっさつ)術」、血管に硬化剤を注入して固める「硬化療法」などがある。
以前は、ストリッピング手術が標準治療だったが、11年に980ナノメートルの波長のレーザーを使ったレーザー治療が、続いて14年に、より波長が長くなった1470ナノメートルのレーザー治療と高周波治療が保険適用になった。現在では、これらの血管内治療法が一般的になりつつある。