1−3月期GDPと、2014年度GDP
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52703293.html
2015年05月20日 在野のアナリスト
内閣府発表の1-3月期GDP速報、実質で前期比0.6%増、年率換算2.4%増。名目で0.7%増、年率換算7.7%増となりました。需要項目別では実質で、民間の最終消費支出が0.4%増、住宅が1.8%増、設備投資が0.4%増、在庫が0.5%増です。また公共投資は1.4%減、公的在庫はわずかな増加です。輸出は2.4%増、輸入は2.9%増となり、全体的に大きな伸びとなっています。
しかし在庫が曲者です。そもそも1-3月期は消費が活発化し、在庫が減るというのが通年の考え方です。そのタイミングで積みあがった。しかもこの数字、実は改定値、確報値になると大きく変化するクセがあり、調整弁のような役割をもつ項目。ではどうしてこれほど在庫が積みあがったか? 簡単にいえば、2014年度のGDP速報値で、実質で前年度比1.0%減と、マイナス成長に陥ってしまったこと。これを隠すため、嫌でも1-3月期を高く見せかける必要性に迫られた、というのが実情なのでしょう。何しろ、ほとんどの報道で年度のGDPについては見出しは勿論、ふれない、書かれていたとしても記事の最後の方に少しだけで論評を避ける、といった傾向もみられるのですから、いかに通年のGDPを隠したかったか、透けて見えるというものです。
安倍ノミクスが成功していたら、消費税を増税してもプラス成長は維持できたはず。しかも2四半期連続でマイナスとなれば、確実に失敗という形となる。そこで在庫を操作してプラスにしたのです。ただし今年度を高く見せかけるため、改定値、確報値になると在庫を下げて、1-3月期もマイナス成長にする恐れがあります。報道の扱いが小さくなればインパクトも下がる。しかも前年度が低くなれば、スタートラインが下がるのですから、尚のことそうした誘惑も働きます。
さらに1-3月期の国民総所得(GNI)は実質で0.9%増、年率換算3.7%増でしたが、2014年度を通してみると実質で0.5%減になった。つまり円安による海外で稼ぐ力がついた、といっても日本全体では稼ぐ力が衰えた形になったのです。また2014年度の雇用者報酬は実質で1.2%減。稼ぐ力が衰えたばかりか、日本経済がシュリンクしている現状も見え隠れします。国も稼げていない、国民にも還元されていない。海外からの実質純所得でさえ、円安ほどには増えていない。それがこのGDP速報から見えてくる日本の実態、ということになります。
3月の景気一致指数の改定値は1.5pt低下と、速報値の1.2pt低下からさらに悪化しました。某メディアで、日米首脳会談でオバマ氏が語った言葉は「海兵隊のグアム移転を前進」が、日本のNHKが当初「普天間基地の移転」と伝えられ、右よりメディアは「辺野古移設」と伝えた、と誤訳が拡散したことを伝えています。大手メディアがこれほど誤報を拡散するのも珍しい、というか、安倍政権で特徴的におきるようになった事象でもあるのでしょう。しかもNHKは誤報を認め、後に訂正したものの、その他のメディアは誤報を伝えていない。それほど速報のインパクトは大であり、事実かどうかより、その効果だけが一人歩きしているのであって、このGDPもそうした目的で、前期比0.6%増などという極めて高い数値が示されたと考えています。
GDPとはGross Domestic Productの略ですが、今やGimmicky Domestic Productと呼んでもいいのかもしれません。からくりの国内生産により、操作された数字で一喜一憂するのではなく、本質をみなければならないのでしょう。そのからくりが、何のために仕掛けられたのか? それを弁えておかないと、いつまでも騙されることになる。改定値、確報値までしっかりみておかなければいけないものとなってしまっているのでしょうね。