安倍首相、岡田民主党代表いずれの考え方でも、憲法違反の政策を認めることはできないが、岡田代表の“安全保障感覚”よりは安倍首相のほうが軍事行動に慎重な構えを見せていると言える。
安倍政権は、原発と同じ構図なのだが、一般向けには「アーミテージ報告書」で示されている米国支配層の要求に従い、集団的自衛権の行使が可能になる“かもしれない”憲法解釈と法整備を昨年7月の閣議決定以降進めてきた。
しかし、その内実は、集団的自衛権の行使と言えるようなものではなく、事態を個別的自衛権に引きつけて取り扱うことにより、集団的自衛権(外国のための軍事力行使)が現実化されないよう“工夫”されたものである。(念のため、だから認めるという立場ではない)
安倍政権は、個別的自衛権とUN集団安全保障活動を認めつつ、集団的自衛権の行使に日本の存亡にかかわるような場合という厳しい前提条件を付けることで、集団的自衛権の行使を実質的に封印する政策を採ったと考えることができる。
(それ以前に、軍事的条約もない国との関係で集団的自衛権の行使を語ること自体が“漫画”的お話)
岡田民主党代表は「集団的自衛権以外で説明すべきものや、必要性に乏しいものだ」と言ったそうだが、それは、安倍政権が集団的自衛権を行使する“気”がほとんどないまま適用事例や条件を示したからに他ならない。
岡田代表は、「現時点で考えれば行使を認める必要はない」と述べ、安倍政権の下での行使容認は認められないと語ったそうだが、安倍政権にとっては、米国支配層の要求を巧妙にかわすという目的と“必要性”があったわけだ。
一方で、岡田代表自身は、「これまで集団的自衛権一般で必要がないという言い方はしておらず、そのスタンスは変わらない。将来、集団的自衛権の概念を使わないと説明できないことが出てきた場合に明確に限定できるのであれば、憲法解釈の変更を100%否定することはない」という考えを示している。
とにかく、中東しかり朝鮮半島しかりだが、地球上のどこかでWW2後に見られた従来型の紛争(軍事的衝突)が起きたからといって日本の存亡に結びつくことはない。
ホルムズ海峡が封鎖されれば、日本よりも中国のほうが先に手を打つだろう。とにかく、原油やガスは一時的には他から輸入することが可能だし、90日分の備蓄もあるから、自衛隊がわざわざ火の粉をかぶりに外地に行く必要はない。
朝鮮半島で戦端が開くとは思っていないが、朝鮮半島における軍事的衝突の危機も、中朝“相互防衛”(友好)条約があるため場合によっては参戦義務が生じる中国が必死になって火消しに走る。
イエメン紛争では日本人も中国艦船で避難したが、世界最大の人口を抱え米国に次ぐ経済大国でありUN常任理事国でもある中国をおだてて前面に出てもらう政策を採ったほうが利口である。
仮にだが、よそで日本の存亡に関わると思われる過酷な軍事的衝突が起きたとしたら、条約的義務を一切背負っていない日本はじっとしているほかない。それほど苛烈な紛争に手を出してしまえ、日本は、逆に、滅亡を早めてしまう危険がある。
(日米安全保障条約は日本領域で軍事的衝突が起きたときのみ規定)
何より、この種の議論で不思議なのは、なぜか、日本国憲法の上位にある(なぜなら憲法違反であるのにそれが問われないから)日米安全保障条約が、変形ではあっても“集団的自衛権の行使”であるという事実がすっぽり抜け落ちていることである。
このため、集団的自衛権とはなんぞやという基本認識さえ共有されないまま議論が行われるという不思議な状況が続いている。
日本が外国のために軍事力を行使する危険性については、“原理主義”の岡田民主党よりは“ヌエ的”安倍自民党のほうがまだ低いだろう。(戦争へは参加はイラク“復興支援”で行ったが)
憲法より上位にある日米安全保障条約の廃棄なくして日本の自立(独立)はないのだという自覚がなにより必要である。
※ 参照投稿
「60年以上前から行使している集団的自衛権:議論されているテーマは“集団的自衛権”ではなく「他衛権」や「米軍下請けの範囲」」
http://www.asyura2.com/14/senkyo166/msg/740.html
「集団的自衛権:日本の行使容認を歓迎する米国の意図」
http://www.asyura2.com/14/senkyo168/msg/538.html
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民主・岡田代表 安倍政権下の行使容認認めず[NHK]
4月24日 21時33分
民主党の岡田代表は記者会見で、集団的自衛権の行使を将来的に容認する可能性は否定しないものの、政府が行使の容認が必要だとして挙げている具体的な事例は現実的ではないなどとして、安倍政権の下での行使容認は認められないという考えを示しました。
この中で民主党の岡田代表は、集団的自衛権の行使容認について「これまで集団的自衛権一般で必要がないという言い方はしておらず、そのスタンスは変わらない。将来、集団的自衛権の概念を使わないと説明できないことが出てきた場合に明確に限定できるのであれば、憲法解釈の変更を100%否定することはない」と述べました。
その一方で、岡田氏は、政府が集団的自衛権の行使の容認が必要だとして挙げている具体的な事例について、「集団的自衛権以外で説明すべきものや、必要性に乏しいものだ」と述べ、現実的ではないなどという認識を示したうえで、「現時点で考えれば行使を認める必要はない」と述べ、安倍政権の下での行使容認は認められないという考えを示しました。
また、岡田氏は、政府・与党が安全保障法制の関連法案を今の国会で成立させたいとしていることについて、「憲法解釈の変更を含む問題なので、国会審議を通じて国民に丁寧に説明する、理解してもらうという視点が政権に必要だが、そうしたものが全く感じられず、理解しがたい」と述べて、批判しました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150424/k10010060041000.html