http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NN942L6JIJV001.html
日銀は2年連続で物価2%を展望、異次元緩和の出口を視野に
2015/04/24 17:23 JST
(ブルームバーグ):日本銀行は30日に公表する経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、2016年度、17年度と2年連続で物価が2%程度上昇するとの見通しを示す。複数の関係者への取材で明らかになった。
複数の関係者によると、15年度の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI )見通し(政策委員の中央値、増税の影響除く)は1月の1.0%上昇から小幅下方修正される可能性があるが、その先は対照的な見通しとなる見込みで、実現すれば、17年度までの見通し期間中に量的・質的金融緩和からの出口戦略をめぐる議論が始まる可能性がある。
黒田東彦総裁は15年度を中心とする期間にコアCPI前年比は2%に達する可能性が高いとの見通しを示す一方で、量的・質的金融緩和の出口戦略を議論するのは時期尚早との立場を崩していない。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「日銀は16年度、17年度と2年連続で2%程度の物価上昇を見込むのであれば、これまでのように『量的・質的金融緩和の出口戦略を語るのは時期尚早』とばかりは言っていられないだろう」と指摘。
その上で、「日銀が出口を視野に入れ始めていることについて、金融市場ももっと関心を払い始めるだろう。日銀は出口戦略について今まで以上に踏み込んだ説明をせざるを得なくなろう」としている。
モルガン・スタンレーMUFG証券は8日のリポートで、「ここ1年間、全産業の時給上昇率が14年2月の0.0%から15年2月の0.9%(12カ月移動平均)となり、1年間で0.9%ポイントの加速である」と指摘。「このペースで時給の加速が続き、持続性があれば、日銀の量的緩和縮小が2016年の秋にも始まる可能性がある」と予想した。
10月に追加緩和の声も
一方、クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは「物価上昇率が鈍化している時に、将来のテーパリングに注意をそらすのは危険だ。日銀は将来のテーパリングよりも、目先の物価上昇率の鈍化に対処することに集中すべきだ。金融市場が近い将来の追加緩和を予想しているだけになおさらだ」と指摘。
その上で、「15年度を中心とする期間に物価が2%に達するとのシナリオは維持するのが困難になり、10月に追加緩和を迫られるのは必至の状況だ」としている。
ブルームバーグ・ニュースが3月31日から3日にかけてエコノミスト34人を対象に行った調査では、22人(65%)が年内の追加緩和を予想している。一方で、量的・質的金融緩和の縮小(テーパリング)の開始時期については、17年末までに行われるとの回答は8人(25%)、18年以降が9人(28%)、「見通せず」との回答が15人(47%)だった。
金融市場はサプライズも
黒田東彦総裁は19日、米ミネソタ州で講演し、「市場の金利の期待はずっと低いまま行くとなっているが、私どもは2%の物価安定目標に近づいていき、15年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いとみているので、そうなるとおのずと金利も市場が見ているよりも上がる可能性がある。そうするとまたサプライズになる」と述べた。
石田浩二審議委員も2月26日の講演で、「今後、経済・物価情勢が想定通り展開していけば、時間の経過とともに2%の物価目標の実現が近づいてくる」と指摘。その場合は、「現在、力いっぱい踏み込んでいる量的・質的金融緩和のアクセルを徐々に緩めていくことも、いずれ必要になってくる」と語った。
原油価格の大幅な下落により、コアCPIは2月に前年比2%上昇、増税の影響を除くベースで0%に落ち込んでいる。日銀は昨年10月に15年度のコアCPI見通し(中央値、増税の影響を除く)を1.9%から1.7%上昇に下方修正、さらに今年1月に1%に下方修正しており、今回下方修正すれば3回連続となる。
技術的な検討は既に着手
複数の関係者によると、仮に15年度の物価見通しが下方修正されても、物価の基調は着実に改善することから、16年度、17年度と2年連続で物価が2%上昇するとの見通しが示される見込み。日銀内では、見通しが実現すれば、17年度までの見通し期間中に、量的・質的金融緩和の縮小、いわゆるテーパリングが始まる可能性が意識されているという。
ブルームバーグの報道を受けて、外国為替市場で1ドル=119円台半ばで推移していた円ドル相場は上昇。24日午後5時15分現在、119円台前半で推移している。
黒田総裁は23日の参院財政金融委員会で、出口戦略について「時期尚早」であり、「金融政策決定会合ではまだ議論はしていない」としながらも、「金融市場調節手段などの技術的な側面の検討は事務方で常々行ってきており、出口にあたって金利水準の調整や、拡大した日銀のバランスシートの扱いといったことが当然課題になる」と述べた。
その上で、具体的な手段として「保有国債の償還、あるいは各種の資金吸収オペレーションのほか、付利金利、補完当座預金制度の適用金利の引き上げなどが考えられる」と指摘。「実際にどのような手段を用いるか、どのような順序で進めるかはやはりその時々の経済・物価情勢、さらには市場の状況などによって変わり得る」と語った。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡 徹 tfujioka1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net 淡路毅, 谷合謙三, 浅井秀樹, 宮沢祐介
更新日時: 2015/04/24 17:23 JST
http://www.asyura2.com/15/hasan95/msg/674.html