黒田東彦日本銀行総裁(「日銀HP」より)
日銀、破綻したロジック 注目の4月末、「また」追加緩和観測高まる、物価目標未達で
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150424-00010006-bjournal-bus_all
Business Journal 4月24日(金)6時1分配信
日本銀行が「異次元」とも呼ばれた量的・質的金融緩和を始めて3年目を迎えた。8日に開いた金融政策決定会合後に会見した黒田東彦総裁は、足元の物価上昇率が鈍る中でも「物価の基調は変わってない」ことを強調し、金融政策の維持を決めた。ただ、物価上昇目標の「2年程度で2%」の実現はもはや絶望的だ。目標未達の説明責任を求める声も日増しに高まり、今月下旬にも追加緩和に動くのではとの観測が広まっている。
●すでにロジック破綻
「(デフレに後退する)リスクは解消されている」。黒田総裁は金融政策維持の理由について、従来通りの説明に終始した。確かに昨年10月末に金融緩和を拡大した時の説明に基づけば、足元の状況はいつ緩和に動いてもおかしくない状況にある。
当時は大幅な原油安を理由に挙げ、14年4月に生鮮食品を除く消費者物価指数は1.5%(消費増税の影響除く)だったが急降下したため、緩和拡大を決めたと説明してきた。現在、同指数は2月時点で0%。マイナスになる可能性もあり、 2%には遠く及ばない。依然として原油も安値で推移している。エコノミストの間からは「10月にならえば、緩和すべき。すでにロジックが破綻している」と厳しい指摘も多い。
黒田総裁は2年を振り返り、「(金融緩和策は)所期の効果を発揮している」と述べた。確かに効果は一部で出ており、緩和効果による円安進行で、企業は過去最高水準の業績だ。一方、輸出や設備投資の回復は鈍く、業績と対照的に企業の慎重な姿勢は変わらない。株価は2万円を一時超えたが、地方経済への波及も「萌芽が出てきている状態」(地方銀行協会幹部)と緩やかだ。
●広がる追加緩和観測
一番の想定外は、消費増税の反動減。企業業績の底上げで大手企業を中心に賃上げは広まったが、消費に結びつかず、物価上昇につながっていないことだ。1日に発表された日銀短観でも消費は回復の兆しは見えつつも、景況感を示す指標である大企業製造業の業況判断指数(DI)は想定を下回る結果となり、生産活動に力強さは欠いている。
労働需給が引き締まり、需給ギャップがタイトになっているとはいえ、緩和待望論が流れる材料は揃っているのだ。もっとも、8日の会合は統一地方選を控えており、緩和拡大に伴う円安進行による地方経済への影響を懸念して、金融政策に変更がある可能性は極めて低かった。焦点は4月30日の次回会合で、追加緩和に動くとの見方も市場関係者の間にはある。
実際、アベノミクスの仕掛け人である山本幸三衆院議員はロイター通信のインタビューに対して、物価見通しを発表する4月の会合を追加緩和の「良いタイミング」と指摘。景気の足踏み感と物価がマイナスに転じる可能性に言及し、今夏以降の景気回復を確実にするには追加緩和が「絶対的な条件」とまで言い切っている。
ただ、これまでの緩和効果を振り返れば、日銀の大量マネーに支えられることによる株価の上昇や円安進行の効果は認められるが、実体経済への波及は鈍い。
また、国債を買い続けることで超低金利の状況が生まれ、地銀などの地域金融機関の経営環境は苦しい環境下に置かれている。運用を国債に依存しており、その他の運用ノウハウを持ち合わせないケースも多い。超低金利が続けば、経営難に陥る金融機関が出てきてもおかしくない。効果が未知数ながら、副作用が小さくないのだ。
黒田総裁は、原油安の対前年の影響も夏以降に剥がれ落ちるため、予想物価上昇率は「今年の秋以降、かなり加速していく」と自信を示す。その自信をさらに深めるための一手を打つのか。30日の日銀の動きが注目される。
(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)