人民銀が預金準備率を1.0%引き下げ、その意図は?―中国メディア
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2015年4月20日(月) 18時37分
2015年4月20日、人民日報によると、中国人民銀行(中央銀行)は19日、各種の預金業務を取り扱う金融機関の人民元建て預金の預金準備率を20日から1.0%大幅引き下げることを明らかにした。昨年以降の2回の金利引き下げと1回の準備率引き下げに続く、通貨政策の大きな動きとなる。第1四半期(1−3月)の各種経済データが発表されたばかりの今、通貨政策はなぜこの時を選んで「次の手」を出すのだろうか。
人民銀研究局の陸磊(ルー・レイ)局長は、「このタイミングでの準備率引き下げは主に3つの点を考慮してのことだ」と指摘し、次のように述べた。
(1)流動性の安定維持を確保する。金融統計データをみると、3月末の広義マネーサプライ(M2)は前年同月比11.6%増加し、増加率は前年同月を0.5ポイント下回った。M2増加率が鈍化した主な原因は、外国為替資金残高の増加幅が前年同月に比べ明らかに縮小したからだ。今年第1四半期の外国為替資金残高は26兆8200億元(約513兆1300億円)で、2521億元(約4兆8200億円)減少し、前年同期比1兆400億元(19兆9000億円) の増加にとどまった。3月単月では2307億元(4兆4100億円)減少し、同4048億元(約7兆7400億円)の増加にとどまった。マネタリーベースの投入を安定させ、M2の安定的で適切な増加を維持するため、4月に金融機関の預金準備率を引き下げる決定をしたことは妥当だといえる。
(2)金融機関の実体経済を支える能力の安定維持を確保する。1〜3月に金融機関が実体経済に投入した人民元建て貸出金は3兆6100億元(約69兆600億円)増加し、前年同期比6253億元(約11兆9600億円)増加した。同期の社会全体の融資規模の増加に占める割合は78.3%で、前年同期を24.1ポイント上回った。預金準備率の引き下げは預金業務を扱う金融機関が十分な貸出資金を備え、実体経済を支える能力を維持する上でプラスになる。
(3)実際の資金調達コストの安定的低下を確保する。3月末の企業の資金調達コストは6.83%で、前年末比12ベーシスポイント低下し、前年同期比は50ベーシスポイント低下した。だが生産者物価指数(PPI)が1〜3月に大幅に低下してマイナス4.6%になったことを考えると、物価上昇要因を除いた企業の実際の資金調達コストは依然として高いことがわかる。預金準備率の引き下げにより、商業銀行の長期低コスト資金が増加し、社会の資金調達コストがさらに低下することが期待される。
中信証券の彭文生(ポン・ウェンション)チーフエコノミストは、「発表されたばかりの第1四半期および3月の経済データからわかることは、経済の下方圧力が引き続き拡大しているということだ。社会の資金調達規模では、帳簿内の貸出以外の資金調達が予想よりも少ないとみられる。そこで今回の準備率引き下げは主に経済の下方圧力に対応するための措置であり、同時に外国為替資金残高の減少による通貨投入量の減少へのリスクヘッジであり、社会の流動性の適度なゆとりを維持するための措置だといえる」と話す。
中国交通銀行の連平(リエン・ピン)チーフエコノミストは、「当面の経済の下方圧力の大きさを考慮するだけでなく、中・長期的にみれば、ネットバンキングと最近の株式市場の好調さにより預金の一部がそちらに流れており、今後は預金の口座数と預金残高の伸びがある程度鈍化することが予想される。よって今のタイミングで預金準備率を引き下げることには十分な必要性があるといえる。大まかに計算すると、今回の準備率引き下げで1兆1000億元(約21兆500億円)から1兆5000億元(約28兆7100億円)の資金が市場に出回ることになる」と指摘する。
▼政策の意図はどこに?
専門家によると、人民銀は今回、預金準備率の引き下げをうち出しており、準備率引き下げは適切な時期に金利引き下げへと「バトンをつなぐ」見込みだ。通貨政策ツールを組み合わせて利用することで、企業の資金調達のコストの高さや困難さが効果的に緩和されるという。
連氏は、「昨年から2回の金利引き下げが行われ、資金調達コストは低下し、貸出金利も引き下げられた。預金準備率を引き下げて金利引き下げの効果がよりよく発揮されるようにする必要があった」と分析する。
今回の準備率引き下げでは全面的に引き下げだけでなく、ターゲットを絞った調整にも重点が置かれている。農村信用合作社や村鎮銀行などの農村の金融機関に対しては、1.0%の引き下げのほかにさらに準備率を1.0%引き下げるとともに、農村合作銀行の準備率を統一的に引き下げて農村信用合作社と同じ水準にする。中国農業発展銀行に対しては、1.0%に引き下げのほかにさらに準備率を2.0%引き下げる。慎重な経営の要求を満たした「三農」(農民、農村、農業)または小規模・零細企業への貸出が一定の割合に達した国有銀行および株式制商業銀行に対しては、同類の金融機関の法定水準を0.5%下回る預金準備率を執行することを認める。
対外経済貿易大学の丁志傑(ディン・ジージエ)学長補佐は、「平均すれば、預金準備率は1.5%引き下げられたことになる。今回の準備率引き下げは銀行の預金吸収力にかかる圧力を効果的に緩和し、貸出金利に引き下げの余地を与えるものだ」と指摘する。
丁氏は、「今回のターゲットを絞った準備率引き下げによって準備率引き下げの効果が効果的に発揮されることになり、国民経済の発展における弱い部分への支援が強化されることにもなった。今後も準備率引き下げと金利引き下げを組み合わせるやり方を続けるべきで、準備率引き下げによって市場の金利引き下げを効果的に誘導し、さらに金利を引き下げて、通貨政策の役割をよりよく発揮させ、実体経済が発展への活力を取り戻すようにする必要がある」と話す。
彭氏は、「企業の資金調達のコストの高さや困難さが緩和されるということについていえば、今回の準備率引き下げの効果は2つの面に現れている。銀行の貸出という視点でみれば、準備率引き下げにより銀行の資金調達コストが引き下げられ、貸出増加のニーズにとってプラスになり、銀行の貸出への意欲も高まる。また準備率引き下げにより資本市場の信頼感を高めることになり、直接融資の規模の増加が促進されることになる」との見方を示す。
連氏は、「今回の準備率引き下げは総量と構造が結びついた調整であり、一律の引き下げとターゲットを絞った引き下げが行われている。資金調達コストを引き下げ、社会経済の成長への圧力を緩和し、企業の資金調達のコストの高さや困難さを緩和し、実体経済の発展を促進する上で非常に重要な役割を果たすことになる」と話す。(提供/人民網日本語版・翻訳/KS・編集/武藤)