東京電力福島第1原発事故で、ほぼ全域が避難指示区域となった福島県楢葉町。政府は避難解除に向けた準備段階として、6日から原則3カ月の長期宿泊を始める。自宅に戻った住民から課題を聴き、解除の可否を7月までに判断するが、町内の住宅の3割は損傷が激しい。人手不足から再建は遅れており、宿泊できない住民からは「自分たちの声も聞いてほしい。見切り発車だ」と厳しい批判が出ている。
政府や町によると、長期宿泊を申請した人は町民約7400人のうち136世帯283人(2日時点)。これまで滞在は日中に限られていたが、6日から自宅で暮らせるようになる。だが、町内約2700戸のうち約900戸は家屋の劣化で解体が決定。多くの住民は自宅に戻れない。
同町上繁岡の会社員菅波孝男さん(56)もその1人。自宅は地震で屋根瓦の一部が崩れ、天井が剥がれた。雨漏りで畳はカビだらけ。壁の隙間から侵入したネズミのふん尿で、悪臭が漂う。
菅波さんは2013年12月に新築を決意。14年1月、国に解体を申請したが、順番待ちで工事に入れない。「7月までに住める状況になるなんて、あり得ない」と話す。
町などによると、工事が遅れる背景には建設業者の人手不足がある。避難区域の除染作業員には1日最高1万円の特殊勤務手当が支払われており、町内で工務店を営む60代の男性は「人手を増やしたくても給料が良い除染業者に取られ、職人が見つからない」と嘆く。
県や町などは今年1月から町内13社、町外20社の工務店などを住民に紹介する制度を始めた。4月から紹介可能な業者を拡充する方針だが、登録業者は1月に比べ5社しか増えていない。菅波さんは「政府は多くの住民が宿泊できる状態になってから、避難指示が解除できるか判断してほしい」と訴えている。
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