【3月27日 AFP】中国が設立を主導する国際金融機関「アジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank、AIIB)」をめぐり、米国が孤立を深めている。欧州勢の参加表明は、AIIBに否定的な立場を取ってきた米国にとって不意打ちだった。
英国、ドイツ、フランス――欧州の米同盟国が次々とAIIB参加を決めるのを、米国は指をくわえて見ているしかなかった。アジアの同盟国、韓国も26日、参加を決定したと発表。既に参加表明国が約30か国に上る中、オーストラリアも参加を検討している。国際通貨基金(International Monetary Fund、IMF)のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)専務理事も、AIIBの設立計画を歓迎する声明を出した。
AIIBは、米国が強い影響力を持つ世界銀行(World Bank)やアジア開発銀行(Asian Development Bank、ADB)と競合する国際開発金融機関となる可能性がある。
元IMF幹部(中国担当)のエスワル・プラサド(Eswar Prasad)氏は「経済的・政治的に緊密な同盟国が相次いで参加を表明したのは、米国にとって想定外だった」と述べ、世界の経済政策を主導する立場としての米国のパワーは縮小していると指摘した。
中国が昨年10月に発表した資本金500億ドル(5兆9500億円)のAIIB設立構想に対し、米オバマ政権は控えめながら熱心なロビー活動を展開してきた。米政府高官は、AIIBによって国際的な開発支援の審査・融資基準が低下するとほのめかしている。
ジェイコブ・ルー(Jacob Lew)米財務長官は先週、議会で「AIIBは、これまで国際金融機関が築いてきた高い基準に忠実だろうか。労働者の権利を保護したり、環境に配慮したり、汚職問題に適切に対処したりできるのか」と、疑問を投げ掛けた。
だが、こうした米国の率直な反対姿勢は失敗に終わった。元米財務省職員のスコット・モリス(Scott Morris)氏は、こう説明する。「米国は、比較的早い段階で孤立した。極めてあからさまに批判を口にしていたからだ。その結果、米国はAIIB参加を検討する国々とオープンな議論を重ねる機会を失った」
■「自信過剰」な米国へのいら立ち
国際金融システムの構築に精通している米国は、自信過剰になり、中国の誘引力や資金力を過小評価していたのかもしれない。
「米国はリーダーとしての地位しか知らない。中国など他の国々が台頭してきている現実に、心理的に順応できていない」と、カナダのシンクタンク、国際ガバナンス・イノベーション・センター(Centre for International Governance Innovation、CIGI)のホンイン・ワン(Hongying Wang)氏は分析する。
また、米政府は同盟国を含む一部の国に、停滞した多国間経済の現状に対する倦怠(けんたい)感が漂っていた点も軽視していたと、専門家らは指摘している。米国は、2010年に新興国の議決権比率を引き上げるIMF改革を阻止したほか、世銀の意向を無視しているとしばしば批判されている。モリス氏は「より大規模な多国間制度に意欲的な国々は、あまり積極的でない米国の立場にいら立ちを募らせていた」と述べた。
■変わる世界の構図
孤立を自覚した米国は、年内にも発足予定のAIIBとの協調に向けて、態度を軟化させつつある。米財務省は先日、公式ブログで中国への「直接的な関与」を続けると表明し、他の友好国と連携して「AIIBが高い基準を導入・実施していくためにはどうすればよいか、具体的に提案していく」方針を示した。
ただ、米国がこれ以上の行動を取るのは難しいとみられる。AIIBに参加しようとすれば米議会の反発は避けられず、「政治的な要因から極めて困難だろう」とモリス氏はみている。
いずれにせよ、AIIBをめぐる一連の動きによって、世界の構図には変化が生じている。中国は、自国が主導するプロジェクトに多数の参加国を集めることで「成熟の最終段階」に入ったことを証明し、国際社会で「建設的なリーダーシップ」を発揮できることを示したと、プラサド氏は説明。「中国が世界に及ぼす影響力の拡大に、米国が対抗するのは一層、困難になる」との見方を示した。(c)AFP/Jeremy TORDJMAN
http://www.afpbb.com/articles/-/3043797
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