市場の動きについて
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52688529.html
2015年03月25日 在野のアナリスト
住友商事が発表した今期の損益見こみが、かなり衝撃です。米シェールガスを含む資源投資に失敗し、100億円の黒字予想から850億円の赤字に修正しました。円安で海外投資に関しては、見かけの価値が上がっているはずですが、それだけに衝撃も大きい。また米企業も同様に苦境に陥っているはずですが、リグの稼働率はあまり下がらず、また早期に破綻したのは一社だけ。米国経済全体も含めて、原油安でも落ち着いてみえるのが、不思議と言えば不思議です。
日本の株式市場は、明日の配当権利とりに向け、下がらない状態がつづきます。しかし売買代金は3兆円に届かず、年度末と考えるなら低調と言える状況です。大型株は上がっており、ドレッシング買いを入れる必要がない、という以上に、すっきりしない閑散という気もします。数ヶ月前なら、日経225の10倍近い取引が成立していた日経225ミニなど、今では日経225より取引が少ない。極端にTOPIX先物偏重になったかと思えば、ここ数週間は現物株の方が増えている。しかも材料株には大きな買いが入り、何日も上昇を演じます。極端なことを言えば、日本市場の中で満潮と干潮ができており、お金が満ちる銘柄への取引と、そうでない銘柄とが、かなりはっきりと色分けされてしまっている。極めて不健全な取引が横行している状況です。
しかも、日本株がバブルでない、という理由付けに来期10%の増益を達成すればPERで15倍、という言葉があります。まず来期10%も増益できるかどうかすら曖昧です。仮に円安になれば、国内経済への打撃が深刻となり、内需に期待できなくなります。外需も今すでにバブルであり、それが後1年はつづく、という算段になります。その目論見通りにいくかどうか。トヨタでさえ来期は販売面で苦戦する予想の中、どうにも楽観的すぎる見立てではないか、とすら思われます。
実はこうした見立ても出ています。年金は運用比率が決められており、幅はありますが国内債券35%、国内株式25%で、未だに債券比率が高い。債券はすでに高値圏であり、後は下がるだけとも言われます。つまり株価が上がっていくと、GPIFが買わずともこの運用比率に入ってしまう。ここ数週間、GPIFの買いが止まったように見えるのも、トヨタの高値に見られるように、年金の運用比率上、限界に近づいてきたのではないか? 日経平均が2万円を越えると、逆にGPIFが売り手になるのではないか? GPIF保有株がぐんぐん上がっている状況に、買いを尻ごみし始めたのではないか? それがここ数週間の動き、年度末にしては閑散とする原因ではないか?
しかも来年度、債券価格がずるずると下落すれば、それもGPIFが株売りに転じる条件ともなります。これまでも何度か、海外投資家は日本売りを仕掛けており、ここで出てきた戦略が、GPIFを早めに売り方へと転じさせる。ここ数日、急速に4月の調整を示唆する発言が市場関係者から流されるのも、株だけが突出して上げてしまうことへの危機感から、ということにもなります。今、日本市場を支えているのは間違いなく買い手が増えている、という需給要因です。それが崩れたとき、日本には大きな調整が訪れる。それは債券安、株安を伴うかもしれない。これで円安ともなれば、トリプル安です。恐らくこれは遠くない未来には訪れますが、あまりに株高を急ぎすぎると、数ヶ月と経たずにそうしたことが起こるのでしょう。
下手をすれば、日本もマイナス金利を導入しなければなりませんが、貯蓄率の高い日本で、マイナス金利などとなればパニックを引き起こしかねません。一部では、日銀は内々に調査している、ともされますが、日銀の打つ手も限られてきた中、株高のみすすむ現状には注意も必要ということなのでしょうね。