円安、株安、債券安
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2015年03月10日 在野のアナリスト
独国のメルケル首相が7年ぶりに訪日しています。日独が接近、と伝えるところもありますが、明らかにウクライナ問題で対ロ包囲網を築く目的であることが窺えます。ただし、米国のように露国を苦境に陥らせ、態度を軟化させようというものではなく、むしろ露国に接近しようとする日中の動向を知る、という目的でもあるのでしょう。さらに言えば、ウクライナ国内の紛争が解決した後、経済復興をするためには多額の支援が要る。IMFはすでに支援を決めましたが、IMFを通じたものであっても日本に追加支援をするよう、依頼しに来たという面もあるはずです。
経済的には絶好調で、日本に接近する必要は独国にはありません。7年ぶりの訪日、ということが両国の事情をよく表します。日本にくると、戦後の問題や原発再稼動など、両国の違いが浮き彫りになりますが、あえてこのタイミングを択んだ、ということは穿ち過ぎかもしれません。独国にできて、日本にできていない、その差は独国にとって極めて優越的な状況を生みます。しかし支持率の高さからみても、メルケル氏にそうする必要性は皆無であり、あえてそれをすることもないのでしょう。ただ、それでも日本にクギを刺しておく必要があったとすれば、やはりウクライナ問題なのでしょう。実利、というのとは少し異なる事情がそこに垣間見えます。
今日は円安、株安、債券安のトリプル安となった日本市場、政府にも激震が走っていると言います。円安でも株高にならなければ、日銀が追加緩和をする必要性がないばかりか、逆効果になりかねません。つまり金融政策に制限がかかった。しかもこれ以上、日銀が債券を買うと、それこそ新発債のほとんどを日銀が買い占める、ということになりかねません。そして日銀の追加緩和の政策対応が不可能になると、政府、日銀は市場コントロールを奪われた状態になります。
しかも円安、株安になると外国人投資家も見切り売りをだしてきます。2月に2.6兆円、そのうち2兆円以上、先物を買い越している外国人が売れば、日本市場は調整局面入りとなります。しかもこの円安、株安はドルベースの日経平均の目減りとなるため、一気呵成に売り始めるかもしれない。円安でも日本経済にとってマイナス、この認識が広がったことは日本政府、市場関係者も脅威でしかないのです。しかも、そこに債券安が加わった。債券安はまだ気にするレベルではありませんが、たびたび不調をおこす入札、ある日突然応札なし、ということもあるかもしれません。
未だに下村文科相の疑惑が追及され、国会では『政治とカネ』が主要議題になっています。しかしここで出てきた『政治とカネ』は、安倍政権が自慢してきた、政治がコントロールするマネーの変調、という意味でより重要です。明らかに安倍ノミクスの流れが変わった、とも囁かれます。為替離れを起こしたと見られていた株式市場が、逆の相関を見せ始めたのですから。
さらにギリシャが支援に必要な対策をとっていない、という問題が出てきました。このままでは3月末にかけて、ギリシャ問題で市場が右往左往する場面もでてきそうです。独国の諺では『財を慕うものは、諸々の悪しきことの根なり』と言います。日銀がお金をばらまけばインフレになる、脱デフレという政策をとってきた政府、日銀が、財を慕うものであったかどうかは、今の政治とカネの問題にも端的に現れているのかもしれません。最後に、これは聖書の一節ですが、載せておきます。『なぜあなたは私に災いを見させ、労苦を眺めておられるのですか。…法律は眠り、裁きはいつまでも行われません。悪者が正しい人を取り囲み、裁きが曲げて行われています』 もしかしたら、この国で起きていることはこれなのかもしれません。裁きを政治による施策だと看做せば、施策が曲がるときは、悪者が正しい人を取り囲むような状態で為される、今のメディアによる言論統制がまさにそれに当たるのかもしれませんね。