審査長期化 認定率も低下 原発関連死1232人に
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015031002000120.html
2015年3月10日 東京新聞
東京電力福島第一原発事故で避難を迫られ体調が悪化して死亡した事例などを、本紙が独自に「原発関連死」と定義し、福島県内の市町村に該当数を取材したところ、昨年三月の調査から一年間で百八十四人増え、総数は少なくとも千二百三十二人になったことが分かった。事故から間もなく四年になるが、被害は拡大を続けている。
市町村は、東日本大震災の直接の犠牲者だけでなく、避難生活を続ける中での死亡なども「震災関連死」と認定し、災害弔慰金(最高五百万円)を支給している。ただ時間の経過とともに、死亡と震災との関係が分からず申請が認められない例も増加。認定率は二〇一二年末までの81・4%が、一四年は63・7%と二割近く下がった。
震災関連死のうち、本紙の集計で原発関連死の該当者がいたのは、一市増えて十六市町村になった。大震災と原発事故の影響で今も、福島県民十一万八千人が県内外で避難生活を送る。市町村による震災関連死の認定数も増え続け、九日現在で千八百八十四人。
このうちの65%が原発関連死に相当する。南相馬市といわき市は、原発事故を理由とした死者数を把握していないが、担当者は「大半が原発避難者」と説明しており、この分を加えると原発関連死の割合はさらに増える。
東京電力福島第一原発が立地する大熊、双葉両町などを含む双葉郡は原発被害が大きく、担当者によると、現在も郡内の八町村での震災関連死の申請は、毎月計二十件前後ある。
最近は死亡に至るまでの生活状況を細かく見る必要から、審査時間は長くなる傾向にある。申請から審査終了まで半年程度かかり、震災から三年以降に死亡した人が認定されるケースが出始めている。
一方、津波被害が大きかった宮城県の震災関連死は九百十人(二月末現在)、岩手県は四百五十人(同)で、原発事故の影響が続く福島県の震災関連死者数が突出している。
<震災関連死と原発関連死> 避難生活での体調悪化など震災の間接要因による死亡を市町村が「震災関連死」と認めれば、最高500万円の災害弔慰金が遺族に支払われる。審査の統一基準はない。厚生労働省は2004年の新潟県中越地震で長岡市が定めた基準を参考にするよう通知しているが、この基準では被災後1カ月以上の死亡は「関連死の可能性が低い」とされる。原発事故では避難を強いられた被災者が多いため、各市町村はこれにとらわれず独自に認定している。
本紙は震災関連死のうち、原発事故での避難の影響で死亡した人の数を、各自治体に弔慰金申請書類などを調べてもらい、原発関連死と集計。震災から2年後の13年3月から半年ごとに調査結果を掲載している。