(今晩のN9)
〔ISとの戦いにイラン革命防衛隊が〕
ISが支配するイラク北部のティクリット近郊。イラク政府軍はこのティクリット奪還は”重要な作戦”と位置づけ大規模な軍事作戦を進めている。ISのイラクでの最大拠点モスル奪還に向けた足掛かりにするため。この二日間の激しい攻撃でチィクリット郊外の一部地域を制圧した。イラクの国営メディアにようると、政府軍はISがいる中心部を包囲して道路などを封鎖、物資の補給を断ち、IS側を干上がらせてから市街地に攻め込む狙いである。今回の作戦に、これまで空爆などで支援してきた米軍は参加していない。
一方で、作戦に加わっているのはイランの革命防衛隊である。ティクリットの作戦に参加しているイランの革命防衛隊は、イランの最高指導者直属の精鋭部隊で、イランの核開発やシーア派武装組織への支援などで中心的役割を担っている。そのイランは1980年代、国境をめぐってイラクと激しい戦闘を繰り広げた。ティクリットの作戦に、なぜ米国と緊張関係にあるイランの革命防衛隊が参加しているのか。
禰津博人・記者(ワシントン)「背景にあるのは米軍とイラク軍の軍事作戦をめぐる不協和音がある。モスルの奪還作戦について、先月米軍幹部が早ければ4月にも作戦開始する、などと計画を事前に公表し、これにイラク側が反発したとされている。カーター国防長官が不正確な情報だったと釈明する事態となった。ティクリットへの作戦について、イラク側から事前に連絡はあったが支援要請はなかったとしている。今回、イランの革命防衛隊がイラク軍支援の形になったことは米国にとり誤算ともいえる」
イランがティクリットの作戦に参加したことで、イスラム教の宗派対立が、一層深刻化するのではないか、という懸念が高まっている。革命防衛隊の国イランは、イスラム教シーア派の国家、イラクのアバディ首相もシーア派である。
一方、ティクリットはフセイン元大統領の故郷でスンニ派の住民が大半を占める。宗派が異なるイランの部隊が作戦に加わることについてティクリットの住民たちは、
住民(電話)「市民が恐れているのはISではなく、大勢の入ってきたシーア派の兵士だ。市民に被害を与えることを心配している」
住民たちがISに傾き、再びISが勢力を強めるのでは、という懸念も出ている。
禰津「そもそもISはイラクでの宗派対立に乗じて勢力を拡大してきた。今回のティクリットの作戦にイラン革命防衛隊や地元シーア派民兵が乗り出したことで、米国は宗派対立の再燃を恐れている。さらにイラクとの連携がぎくしゃくする中、イランがこれに乗じて影響力を拡大することを強く警戒している。ISとの今後の戦いがさらに複雑化し、ひいては中東における米国の影響力のさらなる低下を招きかねない恐れも出ている」
イラクとの関係修復を急ぎたい米は、4日バイデンがアバディと電話会談し、今後も協力していくことで一致したという。
ISの壊滅を目指す中で浮き彫りになった新たな懸念、イラクと米国の結束が問われている。
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