(今晩のTBS報道特集)
〔日本人人質事件 イスラム国との交渉 その経緯とは〕
人質を巡る水面下の交渉の経緯の一部を知る人物がインタビューに応じた。
安岡純平・フリージャーナリスト「後藤さんが紛争地の取材をするトレーニングを受けていると。それがイギリスに本部がある会社でレバノンで訓練を受けたと。で、そこの会社に登録していると紛争地で行方不明になったり誘拐されたとき捜索や交渉をしてくれる団体だという話をされていた」
そのイギリスの会社の内情を知るという人物に話を聞くことができた。
ニルス・ビルト社長(CTSSジャパン)「その会社は評判の良い会社です。自身のウェブサイトでも触れている通り、後藤さんは訓練の後もその会社と頻繁に連絡を取っていた。そして後藤さんは、もし自分に何かあったらここに連絡しろ、と妻に話していたはずだ。そういう意味では後藤さんはプロフェッショナルだった。
(CTSSジャパン:紛争地や危険地帯を専門とするセキュリティ情報会社。社長は、アメリカ、イギリス、ヨルダン、トルコの情報機関にも幅広くパイプを持つという)
ビルト氏が複数の情報源がら聞いたところでは、後藤さんの妻は後藤さんの行方が分からなくなるとすぐに、契約していたイギリスの危機管理コンサルタント会社に連絡、この会社は拘束している相手がイスラム国だと確認すると、主にトルコのルートを使い解放に向けた交渉を始めたと言う。
ビルト「犯人側からの最初の要求は約10億円だった。そこから要求は20億円に上がったようだ。これは交渉が失敗している兆候に見えるかもしれないが、そうとも言えない。”交渉の余地があった”とも解釈できる。いずれにしろ10億円という要求はこの種の事件としてはそれ”相応の金額”ではある」
年が明けてもイスラム国側とコンサルタント会社の交渉は続けられていいたと言う。安部総理の中東訪問はそんな最中だった。
安部「ISと闘う周辺各国に総額で2億ドル程度の支援を約束する」
ビルト「イスラム国はあの演説を聞いて”日本は取引に関心がない”と受け止めただろう。仮に私が交渉を任されたとして、そこへ政治家がイスラム国との闘いに貢献するなどと言ったりすれば、私の立場極めて厳しくなる」
その後、危機管理会社とイスラム国側との交渉は事実上打ち切られたとビルト氏は見ている。
ビルト「警察と外務省は、後藤さんの妻に対して、その危機管理コンサルタント会社をもう使わないよ求めたようだ。彼女はそれに従い会社に連絡して、交渉を止めるよう告げたのでしょう。そしてその時点で交渉の行方は日本の警察と外務省に引き継がれたのだと思う」
一方、外務省はTBSの取材に対し「民間会社を通した交渉を止めるよう妻に申し入れた事実はない」としている。
警察幹部もまたこれを否定している。
後藤さんの解放をめぐって1月下旬まで行われたとされるイスラム国側とコンサルタント会社との水面下での交渉内容は外務省にも報告されていたというが、安部総理は「テロリストとは交渉しないというのが政府の基本的立場」云々と国会答弁している。
−脅迫ビデオが公開された1月20日依然に2人の命を助けられた可能性はあったか?
ビルト「イスラム国は、交渉に応じた実績がある。トルコの例など。だからチャンスは常にある。たとえそれば20%から30%でも、全くないよりはましだ」
民間のコンサルタント会社などが、いろいろなチャンネルを使って人質を解放した例はある。フランス、スペインなど、表面的には政府はテロに屈しない、と言いながら別のチャンネルを活かしておいて、少しでも助かる可能性があれば、最大限にしておく。最後の最後まで放棄しない。
今回インタビューに応じたビルト氏は、日本の参議院の外交防衛委員長のシニア・アドバイザーを務めたこともある人物だが、そのビルト氏は、今後の検証が十分行われないのではないかという懸念を持っていて、今回、取材に応じた背景がある。
塩尻宏・元リビア大使(中東調査会参与)は、二人が殺害された今回の事件についてこう批判している。
塩尻「我々の今までの価値観は、人の命が危険にさらされたときは何を置いても守ってきた。今はそうじゃなく方針転換されて、個々の命よりも、もう少し大きな大義がより重要なんだということになったのは大転換だ。もう犠牲者が出てもいいんだ、ということだ」
http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/161.html