株式市場の動きと、円安の持続性
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2015年02月14日 在野のアナリスト
昨日、あえてとり上げなかった米国ですが、ISILへの武力行使容認決議案が議会からの反発をうけています。中途半端な介入は意味がない、というのですが、実は中東にはもう一つ、イエメンの混乱があります。ヨルダンでもそうであるように、民衆蜂起の素地は整っており、政府の弱体化がすすめば反政府組織が容易に政権にとって代わる。日本の戦国時代のように下克上がおき易くなっているのです。米軍を配置しても、どこでオセロのように味方が敵にひっくり返るか分からない。孤立化する危険もあって、大部隊の投入は困難なのが実情です。
そんな米国では予想外のことがおきています。米雇用統計が堅調で、原油安もあって消費が活況…とはいかず、2ヶ月連続で小売売上高が低下しました。賃金は、米各地ですすんだ最低賃金の見直しで上昇しても、本来消費に活発な中間層が、それほど恩恵をうけていない。もしくは自動車サブプライムローンや、家賃の高騰などが、消費を抑制的にしているとみられます。
米消費の鈍化は、世界経済に影響します。QE3などの金融緩和と、産油国としての急成長が米景気を押し上げてきましたが、その両輪に翳りが出てきた。雇用が堅調でも、消費への波及が少ない。ドル高の弊害も目立ってきた。そこで、G20でも通貨安を牽制し、さらにドル高は国益…としながらも、ドル高を容認しない姿勢を米高官が示し始めました。これは米要人から原油安牽制発言が出てきてから、原油が下げ止まったように、ドル高になりにくくなったことを意味します。
その流れが、実は日本株の堅調につながっています。12日の大幅高は、日経平均先物に欧州系、TOPIX先物に米系の大口買いが入ったことが影響します。円安、株高を狙った動きですが、週末の米取引で、日経平均先物が18055円をつけています。円安でもないのに株高、意外なようにみえて、米高官がドル高牽制発言に舵をきったことで、今後はドル高になりにくい。つまり円高志向が強まります。今、安いうちに株を仕込んでおけば、利幅がとれると米系はみているのです。
これは米投資ファンドによる、温泉旅館チェーンの買収にも現れます。上場を目指すとしますが、上場せずとも円高になったときに売れば、儲けが大きい。当然、高く売れる前提をもつ事業を買収する、が基本ですが、円安から円高への転換を見抜いている点が、こうした買収につながります。日本は改めて、投資ファンドなどの草刈場となった。株買いにもこうした背景があります。
某証券大手が、若者向けの投資セミナーで「バブルの頃より日本企業の収益が倍。だから外国人が注目する」旨、発言したようですが、円がその間、どれぐらい強くなったか。安倍政権になってから、どれぐらい弱くなったか。そうした前提の説明が抜けています。株はバブルの頃と比べて半分、としてみたところで、環境がまったく異なるので、比べること自体ナンセンスです。
では株高はつづくのか? 極めて懐疑的です。日銀は失敗を認識しつつあり、追加緩和は打ちにくい。それ以上に、米国の圧力もあって事実上、緩和は打てなくなりました。10-12月期の企業決算は出揃いつつありますが、一見好調ではあるものの、予想には届いていません。特に内需系は減益決算がめだち、原油安による減損処理ばかりでない痛手が見られます。ここにきて、最近の株式市場では内需系が活況であることも、今後の円高を見据えた米系の動き、とみると説明がつくのでしょう。円安で好調だった外需系から乗り換える動きにより、今の株高が起きているなら、それはローテーションの範疇と弁えた方がよいのかもしれませんね。