ギリシャ。最悪の事態が来ても、それはドイツのせいだと完全に責任転嫁。
またもや危機に陥っているギリシャと、満身創痍のユーロ
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2015年2月11日 Darkness - ダークネス
成長する組織体、時流に乗った組織体は、放置しておいても、どんどん大きく育っていく。少しくらいの環境悪化や組織内のトラブルや失敗があっても、それを跳ね返す。
逆に、助けないと生きられない組織体もある。
いろんな処置を繰り返し、助けるために湯水のごとく支援金や税金を流し込んでも、それで延命している組織体は、少し油断すればまた症状が悪化して倒れていく。
ユーロという組織は、まったく違う文化の国を無理やり経済だけ統合したので、放置しておけばすぐに問題が発生し、症状が悪化していく。
ユーロは、今や満身創痍である。押さえても押さえても、あちこちから問題が生まれて、成長に向かっているのか崩壊に向かっているのか分からない状態だ。
ついこないだまで移民問題で揺れていたと思うと、今度は移民の中から暴力集団「イスラム国(IS)」に共鳴する人間が生まれて内憂外患の状態となった。
■またもやユーロを激震させる問題が戻って来た
多文化共生を押しつけると国民が大反発して移民排斥デモが起きる。移民反対の政党を「極右だ」とレッテル貼りをすると、その極右が大躍進してユーロ賛成の与党を脅かす。
移民を差別するなと叫ぶと、その移民が暴動やテロを引き起こして「これは差別ではない。正当な抗議だ」と言われる。ユーロ推進派は、もう何もやってもすべて裏目に出ているような状態になっているのである。
そして、2015年2月。ここに来て、またもやユーロを激震させる問題が戻って来た。ギリシャ問題である。
ギリシャはリーマン・ショックの直撃を受けて、もはや経済破綻したも同然の国家である。その結果、ユーロ各国からの支援がないと存続できない。
ユーロ圏には強い国と弱い国が混在していて、強い国が税金で弱い国を助けざるを得ない。
ユーロ圏で最も強い国はドイツだが、ドイツ国民はそうやって自分たちの税金がギリシャのような国を破綻させないために使われていることに辟易している。
実は、ユーロ圏に弱い国があるとその国が問題を起こすたびにユーロ通貨の価値が下がってユーロ安になるので、ドイツの輸出産業は利益を得る構造になっている。
だから、ユーロ安を演出するために、ギリシャのような弱い国に定期的に問題を起こしてもらうというのは、ドイツにとってはそれほど悪いことでもないのだ。
しかし、ギリシャが本当に破綻してユーロから離脱するという事態になると、それはまったく別の話と化す。
ギリシャがユーロから抜けると、スペインやイタリアのような国のユーロ離脱派の動きが押さえきれなくなって、ユーロは連鎖的な離脱問題で崩壊するかもしれない。
■ユーロを脱退すればユーロ圏は崩壊するという脅し
「ギリシャがユーロを脱退すれば、ユーロ圏は崩壊する」
それを堂々と言っているのは、当のギリシャである。ギリシャのバルファキス財務相は、このように言っている。
「ユーロ圏はぜい弱で、カードで城を作っているようなものだ。ギリシャのカードを取り除けば、全体が崩れる」
ギリシャはユーロ圏、主にドイツから債務を受け入れる代わりに、緊縮財政を強いられてきた。しかし、もう緊縮財政には限界であるとギリシャ国民は叫んでいる。
ギリシャは2015年1月26日、極左政党が政治的実権を握り、ツィプラス党首が首相に就任している。ツィプラス氏は、一貫して「緊縮財政には反対だ」と叫び続けて首相になったので、この点において妥協することは100%ない。
「もし、それでもユーロがギリシャに緊縮財政を押しつけるのであれば、今までの借金を踏み倒してユーロ圏を離脱する」というのがツィプラス氏の基本的な主張である。
バルファキス財務相の「ギリシャのカードを取り除けば、全体が崩れる」の発言は、このツィプラス氏の主張に沿って述べられている言葉である。
それは、言ってみれば、「我々が抜けたらユーロは崩壊するが、それではお前たちが困るだろう?」という恫喝だ。
もう、すでにギリシャには時間が残されていない。2015年3月には43億ユーロの債務返済の期限が来ている。それが終われば8月にはまた別の返済の期限が来る。
ギリシャは、「この借金を払わないし、緊縮財政もしない」と開き直った。このギリシャをどう扱うのかは、ここ数日でユーロ側が決めなければならない。
■問題は複雑化・深刻化していくばかりとなった
今、ギリシャとユーロ(主にドイツ)は激しい金銭交渉のやり取りの最中である。
ギリシャ「金は返せない。もっと金がいる」
ユーロ「金が欲しければ緊縮財政を続けろ」
ギリシャ「緊縮財政はもう終わりだ」
ユーロ「それなら金を出さない」
ギリシャ「ロシアや中国から金を借りる」
金を借りている側のギリシャは、最悪の事態が来ても、それはドイツのせいだと完全なる責任転嫁に終始している。たとえば、2015年2月10日、カメノス国防相はこのように発言した。
「われわれは議論を求めている。しかしながらドイツがかたくなな態度を改めず、欧州解体を望むならば次善の策に訴えなければならない」
「金を貸している方よりも、金を借りている方が強い」とはまさにこのことで、もはや国庫が空っぽのギリシャは、もうユーロがどうなろうとまったく関係がない。
ギリシャ問題がどちらに転ぶにしろ、ユーロが無傷でこの問題を乗り越えられるはずがなく、次から次へと新たな問題に直面して疲弊していくことになる。
グローバル化を無理やりヨーロッパに押しつけたのが「ユーロ」という実験だが、多文化共生も、通貨統合も、あまりにも大きな問題を起こし続けており、今や墜落寸前となっている。
成長する組織体、時流に乗った組織体は、放置しておいても、どんどん大きく育っていくが、問題のある組織体は延命させればさせるほど、問題は複雑化・深刻化していくばかりだ。
ユーロがどちらの組織体なのかは、今や誰もが知っている。