中小企業狙い撃ち 法人税減税の財源に“赤字企業”へ課税を強化
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ZUU online 2015/1/31 20:30
今年から中小企業を取り巻く環境はさらに厳しくなりそうだ。
自民党が昨年末にまとめた「平成27年度 税制改正大綱」によれば、赤字決算の企業が翌年以降9年間、赤字額を繰り越し税金の控除を受ける「繰越欠損金控除」制度を見直し、課税強化の方針に切り替えると発表。
現在、赤字企業は赤字の金額を最大9年間、所得の80%まで毎年の課税金額から差し引くことで税務上の負担が軽くなっている。つまり、多額の赤字を出すと、翌年以降利益が出ても税金の負担は非常に少なくて済むということ。この制度を活用することで、赤字を取り戻すことができていた。
税制改正大綱によれば、80%まで控除ができていた上限額を平成27年度以降、65%、50%と段階的に引き下げられることになっているため、今後は赤字を取り戻す期間は今まで以上に長引きそうだ。
■法人税減税の財源確保に中小企業を狙い撃ち
政府は、3.2%以上の「法人税減税」の方針を打ち出している。この財源の大半は、今回の繰越欠損金控除制度の見直しだけでなく、同様に赤字企業も対象としている「外形標準課税」を強化することで確保しようとしている。
法人税率の引き下げは、国際的水準と比較しても日本はまだまだ高く、国際的に活躍する企業の競争を妨げる要因となっていたり、海外企業の誘致の面で不利といった批判が多くあがっていたため、財界では歓迎されている。
この法人税率引き下げの財源が、赤字企業への課税強化により確保しようとされているため、赤字企業は今よりもさらに苦しくなり、業績の良い企業はさらに競争力を蓄えるという結果になっている。資金に余裕のある大企業が一時的に赤字を計上した場合への課税の強化であればあまり問題はなさそうであるが、そうではない中小企業の方が多いことを考えるといずれは景気悪化へとつながりそうな政策だ。
■日本航空復活の裏に「繰越欠損金控除制度」あり
日本航空(JAL)は経営危機の際、「繰越欠損金控除制度」を活用し、今では経常利益1,550億円を見込むまでに急回復している。
JALはこの制度をうまく活用してきた。経営危機時には最大で8,000億円にものぼる繰越欠損金があり、これが税金負担を軽くしてきた。自社の努力による業績回復がメインではあるが、税金負担が軽減されたことで間接的に経営再建への後押しとなった点も軽視し難い。
JALのような大企業の経営再建時に活用できるだけでなく、中小企業の業績悪化時にも有効な制度である。これが縮小されていくとなると、中小企業の経営再建はより一層厳しいものとなるだろう。
■どのような社会を目指すのか今一度議論を深める必要がある
2015年に予定していた8%から10%への消費税率引き上げが延期された。これは中止ではなく、延期であるため、いずれは消費税率が引き上げられる。ここで議論となったのは生活必需品については消費税率引き上げを回避し、その他の商品やサービスで広く浅く課税負担をしようというもの。これと同じように、赤字が続く企業では税率負担を軽減し、上場企業等の大手が一時的に赤字になった場合には課税を強化するという方向性も考えられる。
大企業、中小企業、業績の良い企業、悪い企業といった、どこが負担し、どこが負担しないかといったくくりの中で財源確保を目指すのではなく、中長期的にどのような社会を目指すのかというより良い制度設計が望まれる。