「国益とは国民の生命のはず。:森達也情報室」
http://sun.ap.teacup.com/souun/16458.html
2015/1/25 晴耕雨読
https://twitter.com/MoriTatsuyaInfo
森達也公式サイトのコラム更新。
「もしも11月の段階で政府が本気で交渉していたのなら、この段階では身代金の金額も桁違いに低かったのだから、 二人は帰国できたはずだ。その努力をしないまま、なぜわざわざ火に油を注ぐのだろう」 http://moriweb.web.fc2.com/mori_t/
森達也の見解。
72時間の期限が切れる少し前の22日未明(日本時間)、岡村善文国連次席大使は国連総会で、イスラム国を批判しながら「日本はテロや暴力に屈しない」と演説した。
なぜ今このとき、こんなことを世界に向けて言わなくてはならないのか。
報道によれば、11月の段階で後藤さんの家族に、イスラム国から身代金の要求があったという。
ならば官邸がこの事実を知らなかったことはありえない。
もちろんこの時期には、極秘裏に人質解放のための交渉を続けていたと思いたいが、ならばテロ直後のこの時期に、なぜ安倍首相はイスラム国と激しく敵対する国ばかりを訪問し、連携の強化や対テロのための支援を表明したのだろう。
よりによってイスラエルでネタニヤフと握手をしたのだろう。
挑発と解釈されて当然だ。
もしも11月の段階で政府が本気で交渉していたのなら、この段階では身代金の金額も桁違いに低かったのだから、二人が帰国できていた可能性は高い。
官邸は明らかにその芽を摘んだ。
さらに火に油を注いだ。
しかもこの時期に安倍首相は解散を宣言して選挙を行った。
600億円を使った。
身代金には使わずに。
テロに屈しない。
言葉は正しい。
でも「屈しない」と「戦う」は同義ではない。
なぜイスラムの一部はこれほど西側世界を憎悪するのか。
その構造を理解すれば、二人の国民が拘束されているこの時期に、イスラエルなどに行けるはずがない。
国益とは国民の生命のはず。
国益が大好きなはずの日本のメディアは、なぜ政権を批判しないのだろう。
(終)